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平成考現学 混迷の時代を読む技術

大前研一の'分身'が、先行き不透明な時代を、グローバルな視点と大胆な発想で読み解く。目からウロコの卓見、洞察、提言を一挙掲載!

著者:小後遊二 , 大前研一 / 1,400 円 / 書店様用申込用紙

 弊社新刊「平成考現学 混迷の時代を読む技術」の特設ページです。
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◆ 美しい誤解(2012年2月号)

国民がどのような金融商品を購入しようが、結局は国債に化けている。 まさかそういう実態を賢明な日本国民が知らないわけがないだろう、 という「美しい誤解」が円高の理由であり、 日本国債の利回りが依然として低い一番の理由だ。

「霞が関には役人が貯め込んだ埋蔵金が眠っている。これを使えば日本の公的債務も半減する」と主張する人がいる。この「上げ潮派」の主張の肝は、国家債務危機の克服には景気後退を招く歳出削減よりも経済のパイを膨らませることを優先すべきだ、というところにある。そのうえで400兆円にのぼる埋蔵金を吐き出させ、公的債務の絶対額を減らすべき、というのが彼らの意見だ。しかし、東日本大震災の復興費用の捻出にあたって各省庁に眠る埋蔵金を出させようとしても、役人たちは頑として供出を拒んだ。財務省に至っては消費税にも手をつけさせず、結局、法人税と所得税を使い、25年間で償還する復興債の発行という最悪の選択をした。短期間で返済する(といっても25年)ことで役所の反対もなくすんなり通ったが、市場はこれも日本の国家債務としてみなしている。国債暴落の最後の瞬間が迫る日本にとってはまさに最悪の選択である。

 日本の公的債務は1000兆円だが、個人金融資産が1400兆円あるからまだ余裕がある、という説がある。埋蔵金が400兆円あるから実際の債務は600兆円、GDP比でみても120%以内で「世界最悪」ではない、と解説する人もいる。それに対して、個人金融資産にも借金が400兆円あり、実際には1000兆円しかなく、しかもすべて国債を買うわけではないのであてにすべきではない、という反論もある。実際は両者とも間違っている。日本では金融機関が提供する定期預金、郵貯、信託、生保、年金などあらゆる金融商品の主運用先は国債だ。三菱東京UFJ銀行が集めたカネは、企業へ貸し出されるよりも国債購入にあてられる方が大きい、と外国メディアに皮肉られている。ゆうちょ銀行に至っては「国家の生命維持装置」と揶揄されるほど国債を腹一杯喰っている。国民がどのような金融商品を購入しようが、結局、国債に化けているのだ。まさかそういう実態を賢明な日本国民が知らないわけがないだろう、という「美しい誤解」が円高の理由であり、日本国債の利回りが依然として低い一番の理由だ。だから、「国民は単に知らないだけ。知ったら一斉に資金を引き揚げる」などと言わないほうがいい。国債暴落の地雷を踏むからだ。

 半年前と違って、市場はヨーロッパの国家債務危機に対してナーバスになっている。フランスの国債格付けがワンランク引き下げられただけで、あのおしゃべりサルコジが言葉を失した。1月15日にS&Pの格付け引き下げに対するコメントを求められ、「1月末までにフランスの取るべき道に関して国民に説明したい」と力なく語るのがやっとだった。ギリシャのパパンドレウ、スペインのサバテロ、そしてイタリアのベルルスコーニも債務危機で失脚する寸前までは多弁だった。ヨーロッパの全ての要人は市場の目をそらしたいのだ。日本の唯一の拠り所は「国民が(知らずに)安心して国債を購入し、資産の海外持ち出しも今のところ目立った動きにはなっていない」ということにある。しかし、ひとたびトレーダーたちの疑いの目が日本に向けられたら、彼らは大量の「空売り」から入ってくる。その時、「埋蔵金がある!」と叫んでも、すぐに出てこないものは戦力にならない。ギリシャだって「税金の未収金が国家予算12兆円の半分もある。徴税すれば危機ではない」と叫んだが、市場は聞き入れなかった。市場が暴力を振るう以前は、なぜギリシャは大丈夫なのか、なぜイタリアの実体経済は見かけよりもいいのか、などと学者が悠長に説明していたが、地滑りが起きてしまえばそんなものは犬の遠吠えにすぎない。市場から制裁を受けた後では遅いのだ。

 市場は知識も知恵もない単なる暴力装置。長期低迷で借金漬け、と実態の悪さでは群を抜く日本が狙われないためには、「美しい誤解」が続いている間に与野党が一致して「やれることは全て、即やる」しかないのである。

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