社会・文化
日本製鉄「採用担当者」の就活セクハラ
「Hしてもいいですか」「断ったら内定取り消しだよ(笑)」
(前略)
日本製鉄は6月18日、東日本製鉄所鹿島地区(茨城県)で中途採用を担当していた男性社員が、入社予定者の女性に対して不適切な行動を取ったとして、懲戒解雇処分にしたと発表した。
《元社員が、当社のルールに反して、入社予定者の方と私的なやりとり・面会を行うなど不適切な行動をとっていたことが判明いたしました。このような事態に至りましたことにつき、深くお詫び申し上げます。
当社は、今回の事態を重く受け止め、当該社員に厳正な処分を実施いたしました。
また、二度とこのような事態を発生させないよう、以下の再発防止策を強化・徹底して参ります(以下略)》
懲戒解雇された元男性社員の行為を、毎日新聞は「性的関係迫る」、他の新聞は日本製鉄の発表した文言のまま「不適切な行動」と濁しているが、正確に記せば次のようになる。
「採用担当者としての立場を悪用し、LINEで食事に誘い、『Hしてもいいですか』『断ったら内定取り消しだよ(笑)』などのメッセージを送って追いつめ、ついには目的(性行為)を達した」
被害にあった女性(A子さんとする)は茨城県出身で、地元の超一流企業である日本製鉄(新日本製鉄と住友金属工業が2012年に合併、新日鉄住金となり、19年に現社名に商号変更)への入社を心待ちにしていたという。しかし、就活セクハラで精神的ショックを受け、現在は自宅で静養中。日本製鉄には入社していない。
日本製鉄の社員による就活セクハラとはどんなものだったのか、参考までに紹介しよう。
A子さんは昨年11月24日、東日本製鉄所で面接を受け、12月23日に二次面接を受けた。年が開けた1月5日、めでたく合格通知が届く。入社予定日は5月6日、4月中に社員寮に入居する段取りが組まれた。
4月2日、A子さんの携帯に突然メールが届く。
「日本製鉄のMです」
この時にLINEの交換を求められ、A子さんは応じてしまう。
「また連絡します。入社したら、お酒でも飲みに行きましょう」
するとこれ以降、連日、しかも1日に何度もLINEが送られてくるようになった。
4月5日、Mから「昼ごはんでも一緒にどうですか」と連絡が来た。採用担当者の機嫌を損ねるのはまずいと思ったA子さんは「ぜひともご一緒させてください!」と返信し、Mが休みを取るという4月16日に昼食を共にすることが決まった。
調子に乗ったMは「朝からず〜っと会えますか」「Hしてもいいですか」と採用担当者とは思えない文面を送りつけてきた。ちなみにMは60代である。
A子さんは「ダメですよ〜〜〜笑」と受け流すが、Mは執拗だった。
4月9日のLINEでは、女性の採用は自分の好みで選んでいる旨を告げたうえで、「写メ欲しい」「パジャマ脱いだら」などと、まさにセクハラ三昧。
そして4月14日、当初の予定より2日早く昼食を一緒にとることになったその日、MはA子さんと性的関係を持った。
A子さんが綴った文書によると、その日、MはA子さんと同期入社の予定のKさんのことに触れ、「Kさんもやらせてくれるかな。断ったら内定取り消しだよ」などと発言しており、Mのさじ加減一つで自身の処遇が決められることへの恐怖をA子さんは強く感じたという。そして、失業保険もなく、コロナ禍で就職活動が困難になっている状況では、Mの機嫌を損ねないよう従い続けるしかないと考えるに至ったという。
関係を持った後も、LINEでメッセージをひっきりなしに送ってくるMに対し、A子さんは強烈な嫌悪感を抱くと同時に、自分自身についても汚いもののように感じ、何度も繰り返し手洗いやうがいをするようになった。抑鬱、倦怠感、動悸、希死念虜、集中力低下など鬱病の症状も現れるようになった。
A子さんの両親が一連の経緯を代理人を通して日本製鉄に伝えたところ、Mの上司(東日本製鉄所総務部鹿島総務室長)が謝罪に訪れた。上司は「自分が全ての責任を持って対応している」と話したというが、両親は「娘が受けた仕打ちは絶対に許せない。せめて本社のしかるべき立場の人が謝罪に来るべきではないか」と憤りを隠さない。
(後略)