記事(一部抜粋):2021年6月号掲載

経 済

事業者向け金融に淘汰の荒波

【情報源】

 45兆円にのぼるコロナ関連融資が、事業者向け金融業者を窮地に追い込んでいる。昨春からの政府の企業支援策で中小零細企業の資金需要は一気に消失。貸付金は月によってはコロナ前の半減を強いられ、すでに廃業に踏み切る業者も出てきた。
 2006年の改正貸金業法施行に伴う貸出上限金利の大幅な引き下げを契機に、この業界は壊滅状態に陥った。多くの中小業者が消え去り、大手も倒産もしくは身売りを強いられた。事業者金融(商工ローン)ではロプロ(旧日栄)やSFCG(旧商工ファンド)が法的整理を申請。個人事業主や零細企業の運転資金の供給源でもある消費者金融では武富士が会社更生法、アイフルは私的整理(事業再生ADR)を余儀なくされ、アコムやプロミス、レイクはメガバンク傘下に入ってかろうじて生き延びた。そして、今回のコロナ禍による中小企業への巨額の公的資金投入で再び淘汰の荒波に晒されているわけだ。もちろん、コロナ関連融資が終了すればそれなりに資金需要は回復するだろうが、ただでさえ今後は中小零細の淘汰が加速、コロナの収束が見通せないなかで体力の持たない中小クラスの消滅は避けられないだろう。
 そのほかでもコロナの煽りを受けている金融業者は多い。クレジットカード決済代行サービス大手A社は複数のカード会社の事務処理を一本化、早期に資金回収できることで加盟店を拡大してきたが、手数料収入が激減し瞬く間に赤字へ転落。何しろ主力顧客が大阪のミナミやキタ、東京・赤坂などのクラブというのだからたまったものではない。まさにコロナ禍の直撃である。「取引先が逃げ始め、金融機関に融資を打診している」(金融関係者)ようだが、1500億円超もの借入金を抱えるだけに支援の行方は予断を許さない。
 一方で、「売掛債権ファクタリング」という強力なライバルも登場している。売掛債権などを期日前に買い取るファクタリングは入金前に債権を現金化でき、貸し倒れリスクや債権回収コストは業者が負う。なかでも売掛債権ファクタリング業者は債権の買い取りに特化、実質的に金融業者の役割を果たし、急速にシェアを伸ばしている。最近では、“クラウドファクタリング”と称する新興ベンチャーのOLTAなどインターネット経由で融資する「ネットファクタリング」も台頭。ネットで申し込み、独自のAI(人工知能)スコアリングで審査を実施、早ければ即日融資が実行されることで利用者が急増しているという。
(後略)

 

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