群馬県の大手信用金庫で理事長のパワハラにより多数の職員が離職する事態が発生、金融当局も注視している。
この信金は2002年に地元の2信金が合併して誕生した、地元を代表する金融機関のA信金。創立は1928年と古く、群馬県を中心に20店舗を構え、栃木、埼玉の両県にも展開している。
創立90年を迎えた2018年6月に理事長が交代、その際に新理事長に昇格したのが今回、パワハラがあったのではないかと問題視されているH氏だ。
H氏が理事長に就任して以来、すでに執行役員2名、支店長1名、次席クラス5名が相次いで退職した。
「以前にはあり得ない幹部級職員の退職数で、理事長によるパワハラが要因と囁かれています」(地元の金融関係者)
関係者によると、H理事長は自分が気に入っている職員に対しては甘く、実需の伴わない融資事案であっても黙認する一方、気に入らない職員に対しては徹底的に無視するか極端に厳しくあたるという。
その矛先は一般職員のみならず役員にも向けられる。
「今年1月には本部2階フロアにいる約20名の職員を前に、常務理事を理事長席の前に立たせ、30分もの間、延々と“あんた”呼ばわりしながら『開いた口がふさがらねぇ!』などと罵倒し続けた」(関係者)
(中略)
A信金については、こうした理事長によるパワハラだけでなく、取引企業の破綻に伴う不良債権化も問題視されている。昨年12月に突然、事業を停止した前橋市の不動産賃貸業「綜合プランニング」(平尾真一社長)向けの融資だ。
帝国データバンクの調査によると、同社は2007年の創業で、カフェやレストラン、日本語学校の運営のほか、フリーペーパーや官公庁の広報誌出版も手掛けている。1月12日に前橋地裁から破産手続き開始決定を受けており、債権者は判明分だけでも約170を数え、負債総額は40億6000万円にのぼる。
綜合プランニングには地元群馬の地方銀行をはじめとしてほとんどの信用金庫が融資しているが、地元信金の関係者は「信金の多くは保証協会の保証などで保全措置をとっているが、A信金さんは数億円の融資残高のうち半分以上が保全措置のない“裸の融資”になっているようです」と指摘する。
この背景には、綜合プランニングの創業者である平尾社長とA信金幹部との濃密な関係が影を落としていると見られている。地元信金関係者がこう囁く。
「平尾社長は地元の第二地銀のOBで、A信金の取引支店の元支店長も同じ第二地銀の出身。二人は銀行時代、上司部下の関係にあったと聞いている。その関係から平尾氏とA信金の現役員はスポーツ仲間でもあるのです」
この役員は綜合プランニング向け融資にお墨付きを与えていたとされる。
しかし、綜合プランニングの事業実態は杜撰なものだった。破綻を契機にその膿が一挙に噴出している。
(後略)