記事(一部抜粋):2021年2月号掲載

政 治

「ポスト菅」は石破か河野か

選挙に勝つには国民人気のある神輿が必要

 菅政権の誕生は昨年9月16日だから、わずか4カ月あまりの急変である。当初はご祝儀相場もあって支持率が上向いたものの、日本学術会議で一揉めし、何とかこれを乗り越えたと思ったら、コロナの感染爆発……。あっという間に「後手後手」が露呈し、緊急事態宣言を発出しても支持率の下落傾向は止まらなくなってしまった。
 こうなると永田町の先生方は気もそぞろである。万が一にも人気薄の神輿を担いで選挙を戦うことになれば、自分の落選に直結するからだ。衆議院は10月21日が任期満了。目下、議員生命をかけた生き残りのシナリオをめぐって右往左往が始まっているという。
 自民党のさる閣僚経験者が言う。
「菅政権の支持率が右肩下がりの傾向になるということは、伝家の宝刀である解散権が封じられることとほぼ同じ意味です。もともと今年は7月下旬に都議選があり、その前の3カ月間は創価学会の組織がフル活動しなければならないため、解散できないという制約がありました。つまり、4月下旬から7月までは伝家の宝刀を抜けないという縛りがあった。したがって、東京五輪の前に解散を打つというなら4月25日の投開票しかなかった。この日は、大臣室でカネをもらって議員辞職した吉川貴盛元農水相の衆議院補選と、亡くなった立憲民主の参議院議員、羽田雄一郎さんの補選が予定されているし、ちょうど予算も出来上がって一段落している時期。解散総選挙のタイミングとしては悪くなかったのですが、今の状況ではもう解散は100%無理なのです」
 この閣僚経験者が嘆く理由は、単に支持率が今にも30%割れしそうなことだけではない。昨年12月初旬に自民党がおこなった選挙区ごとの世論調査が、お先真っ暗の悲惨な結果だったからだ。
「幹事長室が中心になって実施した選挙区ごとの調査では、自民党が現在の282議席から50議席以上減らすという結果が出ていました。衆議院の過半数は233ですから、単独過半数もおぼつかない惨敗です。特に東京、大阪、名古屋などの都市部で名だたる候補者が立憲民主や維新の候補に差をつけられていました」(同)
 大阪を中心とした関西の都市部は維新の勢力に席巻され、世論調査の結果を信じれば、小選挙区で勝てる候補者がほとんどない壊滅に近い状態。比例復活を考えても、かなり厳しい情勢だ。
 一方、首都東京は1区で山田美樹が海江田万里に差をつけられ、前回に引き続き小選挙区で負け、場合によっては比例復活も難しい可能性があるという。3区は前回、小選挙区で競り勝った石原宏高が立憲民主の松原仁に明らかなリードを許し、さらに5区、7区となぜか奇数の選挙区で苦戦が続くという結果に。
(中略)
「こんな状態で今さら解散を打つのは自爆と一緒ですから、もう解散はなしです。9月にもう一度、自民党総裁選挙をおこない、新しい総理の下で任期満了の選挙をやるしかないしょう。脳裏をよぎるのは、支持率の下落に気づかぬふりをしながら、ずるずる追い込まれて政権交代を許したあの麻生政権の悪夢です。でも幸か不幸か、今の立憲民主には当時のようなスタープレイヤーがいません。鳩山も仙谷もいないし、菅も小沢も終わった感が強い。さらに言えば、子ども手当のような看板政策もない。新しい総裁を選んだ直後なら、自民が負けても過半数くらいは確保できるはずです」(同)
 問題は、誰が選挙の顔になるかということだが、9月の総裁選挙では、有権者からの人気があるかどうかが勝負の分かれ目になりそうだという。
「総裁選挙に出る有資格者であるものの、岸田文雄前政調会長や茂木敏充外相は人気という点で神輿として担ぐには不適当だと思います。細田派の下村博文政調会長もさすがに無理。人気で言えば、石破茂と河野太郎の二人に絞られるのではないでしょうか」(同)
 石破元幹事長は、次期総理を占う世論調査で毎回上位に入っている実績がある。では、どうして河野ワクチン担当相の名前が挙がるのか。
(後略)

 

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