たった3カ月前、170億円もの債務超過にあえいでいた「レオパレス21」がどうにか持ち直す気配を見せ始めている。経営悪化の根本問題であるアパートの施工不備問題は、時間的遅れを除けば解決の方向に向かっており、それに伴いアパートの入居率も徐々に回復する見込みなのだという。
経営危機の直接的な原因となった債務超過についても、ニューヨークにあるソフトバンク傘下の投資ファンド「フォートレス・インベストメント・グループ」から、出資と融資を合わせて500億円以上調達できたおかげで、当面の資金に若干の余裕も生まれたわけだ。
この10カ月間、日本中がコロナ禍に沈み、業績悪化が珍しくなかったことに鑑みれば、何とか最悪の事態を免れたと、胸を撫で下ろしたレオパレス21の経営陣もいるかもしれない。
だが、同社の場合、半ば身内と思っていたアパートオーナーたちに訴訟を起こされたり、メディアに施工不備を告発されたりで、想定外の悪い展開が続いた。
実は、今回も同業の上場企業から顧客に掟破りの営業をかけられ、敵対する「LPオーナー会」には倒産を喧伝され……。いまだ火の粉は燻り続けているのだ。
腹に据えかねたレオパレスは訴訟も覚悟で、長年、対立してきたLPオーナー会の代表者との契約解除に動き出した。レオパレスにとって“最後の聖戦”ともいうべき闘いが始まっているのである。
山口県内でレオパレスと契約を結ぶアパートオーナーが憤るのは、あるチラシの内容についてだ。
「数カ月前、まだレオパレスの窮状がよく報道されていたころ、日本管理センター株式会社という会社のチラシが配布されました。そこには、『レオパレスオーナー様への特別のご提案!』とか『レオパレスオーナー様の特別プラン』などと書かれていて、つまり、サブリース契約を乗り換えないかという営業のチラシだったわけです。読んで驚いたのは、『まだレオパレスさんで大丈夫ですか? 数多くの問題が残るレオパレスさん……万が一が起きる前に……』と、あたかも倒産するかのような煽り文句が入っていて、『レオパレス引継担当』というポストまでつくっていたこと。確かにレオパレスにとって苦しい時期ではありましたが、その弱みにつけ込むえげつないやり方という印象でした」
日本管理センターは2002年に創業。サブリースを中心として、不動産賃貸管理を全国展開し、2011年に上場。いわばサブリース業界の新興勢力である。
管理戸数は約10万戸で、50万戸以上のレオパレスの5分の1程度の規模。業界大手の債務超過を横目に、逆に自分たちの営業チャンスと捉えたのかもしれないが、このチラシの存在に気づいたレオパレスは猛抗議をおこなったという。
レオパレスに詳しいジャーナリストが明かす。
「この秋、レオパレス側が複数回、日本管理センターの武藤英明代表取締役に抗議したところ、先方は、山口県でそのようなチラシが配布されていた事実を認めました。一方で、チラシを作成したのも、配布したのも、日本管理センター本社の命令による業務ではなく、パートナー企業が独自の判断でしたもので、本社はそれをまったく知らず、一切、関与していないと言い訳しているのです。しかし、問題のチラシにはパートナー企業の社名は入っておらず、記載されているのは日本管理センターだけですから、レオパレスとして納得できるはずはありません。たとえその言い訳が事実だとしても、監督責任があるのではないかと、さらに追及していく予定です」
生き馬の目を抜くビジネスの世界とはいえ、倒産という不確定な風評を流布し、顧客を動揺させて契約を奪い取るスタイルは、公正な競争原理の範疇とはいえまい。一部上場企業としてのモラルが問われかねない局面だが、実のところ、レオパレスの倒産を喧伝していたのはライバル企業だけではなかった。
レオパレスと敵対するアパートオーナーたちの任意団体「LPオーナーの会」が、より具体的に倒産に言及し、入会を勧誘するパンフレットをオーナーたちに郵送していたのだ。
(後略)