首相主催の春の桜を見る会に各界の功労者を招待するのは良い事である。しかし、安倍首相(当時)が、その地位を利用して、自分の後援会関係者を募集して、毎年何百人も招待していた事実は、権力の私的乱用以外の何ものでもない。
最近になって、急に、証拠があったとかで、その前夜祭の会費では賄えなかった超過分を5年にわたり安倍事務所が補填していた事実が、自分の選挙区民に対する財産上の利益の供与(これを公選法上は違法な「寄附」と呼ぶ)に当たるかが問われている。
ところが、いつの間にか、その補填についての政治資金収支報告書不記載の問題だけに絞られているが、首相が桜を見る会に自分の選挙区民を大量に招待した事実の方がよほど大問題である。つまり、公費による大規模な供応である。
公表された資料によれば、2019年の会で招待客1名の単価は3500円余であるが、それを税金で負担して毎年何百人も招待し続けたことは、遵法意識のない権力者だからできたことである。
本来は各界の功労者が招かれるべきところを、安倍代議士の選挙区民に限り、安倍事務所が、「申し込み用紙はコピーも可」だとして広く参加者を募った。しかし、首相の後援会に限りそんな特権がある法的根拠はない。さらに、当日は他の招待客より先に入場させて飲食や土産の入手を許したという、何ともいじましい話である。
これが公費による供応でないと言い張るなら、一体何なのか? 説明してほしい。
これは、公費が目的外に使用されている以上、予算の目的外使用である(財政法32条違反)。だから、このような違法な公金の支出を指示した内閣府主管大臣(首相)は、明白な職権濫用である(刑法193条)。また、首相の管理下にある公金を私的に流用したのだから横領である(刑法252条)。さらに、国のために事務を処理する首相が、安倍代議士個人の利益を図り、その任務に反する行為をして国に財産上の損害を与えたのだから背任である(刑法247条)。
だから、前夜祭費用の補填よりも桜を見る会に安倍代議士の選挙区民を多数招待したことの方が重大な犯罪であり、むしろこちらを先に立件すべきであろう。
もちろん、それには、招待者名簿がないために具体的に立件しようがないという言い訳があろう。しかし、「先例踏襲」の日本国の行政府において、どのような形であれ桜を見る会の記録が先例として残っていないはずはない。要は検察のやる気の問題である。
(後略)