11月3日の選挙から2週間近くかかってようやく最後の3州で勝者が決まった。しかしトランプ陣営はそれを受け入れないで訴訟でひっくり返そうとしている。もちろん共和党陣営の大半は「殿、ご乱心お収めください」というスタンスだ。しかし核のボタンを握った男、軍に攻撃命令を出せる男はこの期に及んで国防長官をクビにした。断末魔の喘ぎで暴走するリスクは残ったままだ。
バイデン新大統領は1月20日の就任演説で、世界に恥をさらしたアメリカの選挙制度の改革を第一に訴えるべきだろう。毎回大統領選挙の後には改革機運が芽生えるが、数カ月も経つと関心が薄れ、2年経過すればニュハンプシャー州のプライマリー(予備選)への関心が高まり、制度を改変しようという流れにはならない。就任早々に一大課題としてあげ、超党派のタスクフォースをスタートするのが唯一のチャンスだ。
アメリカ大統領選挙の明らかな欠陥は得票と結果が反対に出る可能性が高いことだ。前回も今回も民主党候補が数百万票多く票を集めたが、前回はラストベルトで善戦したトランプがより多くの選挙人を獲得した。アル・ゴアとGWブッシュの場合も僅差ではあったがゴアの総得票数が多かった。選挙制度の根本的な欠陥がこの「選挙人制度」だ。小さな州に配慮して各州にまず2人を与え、その後に人口に応じて選挙人数が割り当てられる。多くの州では勝者総取り方式だが、メーンとネブラスカでは得票に比例して選挙人を割り振る。しかも選挙人は勝者に必ずしも投票しなくていいらしい。事実、2016年には7名の選挙人が造反したと言われているがお咎めはなかった。
ICT時代の21世紀になぜこのように曖昧な代理人制度が必要なのか。制度改革に正面から取り組む必要がある。第一案は獲得投票数(ポピュラー・ボート)の勝者が大統領になるという方式だ。その場合の投票方法はスマホ、PC、郵送、投票所など、どれでもいいようにする。事前投票も海外からの投票も期日までに到着したものは全て有効とする。ただしアメリカには生体認証に基づくIDがないので、選挙権を持つ全ての人が成人(18歳)になった時に登録するようにする。これによって選挙権があっても登録しないと投票できない今の選挙人登録制度を廃止することができる。
もう一つ改革すべきは2月にニュハンプシャーから始まるプライマリーだ。大統領に就任して3年目に入るとプライマリーのことを考えてマスコミや政治家が浮き足立ってくる。トランプで特に明らかになったように国政も外交もスタンドプレーになりがちだ。
(後略)