記事(一部抜粋):2020年12月号掲載

経 済

コロナに追いつめられたテレビ業界

広告収入が激減、ローカル局は崖っぷち

(前略)
 果たして11月中旬に発表された各キー局の上半期の決算数字は、減収減益のオンパレードだった。
 ざっと紹介すると、半沢直樹が社会現象にもなったTBSテレビは単体で売上高が16%以上も落ち込み、本業の儲けを表す営業利益は3億6000万円の赤字に陥った。最大の原因はCMが前年同期と比べて140億円以上もごっそり消えてなくなってしまったこと。それでもTBSホールディングスが未だ命脈を保っていられるのは、不動産での儲けがあるためだ。約80億円の売り上げに対し営業利益は41億円以上。TBSホールディングスの上期の営業利益45億円のほとんどを稼ぎ出しているのだ。
 視聴率三冠王の日テレも同様に厳しい。今年上半期の数字を見ると、日テレ単体では売上高が対前年比で82%、営業利益は59%。放送収入、つまりCMが200億円以上も蒸発したため、最も視聴率のよいテレビ局なのに営業利益が145億円程度しかない。もっとも、これはグループ企業の中では比較的元気な数字で、第2四半期の日本テレビホールディングスの連結の数字を見ると純利益は56億円もの大赤字。これは6年前にサントリーから買収したスポーツクラブ「ティップネス」が全館休業し、会員数が大幅に減少した影響が色濃く出ているためだという。責任を取るかたちで、取締役が今後5カ月の間、10%から20%の減俸となっている。 
 コロナ禍で「羽鳥慎一モーニングショー」や「報道ステーション」の視聴率がよかったテレビ朝日は、王者・日テレを逆転する可能性を秘めている唯一のキー局ではあるものの、懐事情は大差ない。CMは170億円以上が消し飛び、上半期でテレ朝単体の売り上げが200億円以上減少、連結ベースで純利益は3分の2に落ち込んだ。テレ朝の場合、六本木に本社があるというロケーションを生かしたイベント収入が、これまで一定の売り上げをつくって決算に寄与してきた。昨年は53億円以上あったが、今年は恒例のイベントだった夏祭りも中止となり、売り上げは10分の1以下。大幅な減収減益となっている。
 だが、キー局の中で最悪だったのはお台場に本拠を構えるフジテレビに違いない。フジテレビ単体で見ると上期の売上高は対前年比で270億円も減り、営業利益にいたっては、前年の49億円が1億300万円に。純利益も141億円が4200万円に減少した。百分率に直すと営業利益は98%のマイナス、純利益は99%のマイナスという悲惨な数字になる。
 旗頭がこの有様だから、当然、グループ全体を見渡しても厳しく、2468億円というナンバー1の売り上げを誇りながら、営業利益はわずかに48億円どまり。営業利益率1.9%という効率の悪さに陥っているのだ。
(中略)
 電波の既得権益で守られてきたキー局はコロナで追い詰められてサバイバルしているのだが、実は本当の意味で崖っぷちに立たされているのは、全国放送の配信を受ける立場のローカル局だ。ベテランディレクターが解説する。
「日本には120社ほどのローカル局があり、10社程度の独立系を除けば、全てキー局に連なっています。これらのローカルはキー局に比べて売上規模も全然小さいし、圧倒的に体力が弱い。自前でつくるコンテンツにも力がないですよね。だからタイム広告の営業も難しいし、スポット広告の収入もほとんどない。というのも、キー局の番組を全国ネットで流しても、ローカル局にはスポットの収入は入って来ないのです。代わりにローカル局はネットワーク配分金をキー局から受け取って経営を成り立たせてきたのですが、今、この仕組みに大きな地殻変動が起きはじめた。昨年からNHKが地上波の放送と同時にインターネットで番組を流す同時配信を始めましたが、もしキー局がNHKと同様にネットで同時配信をするようになると、理屈の上ではローカル局は存在理由が消滅してしまいます」
(後略) 

 

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