政 治
混戦必至、来秋の自民党総裁選
菅、岸田、石破、河野、茂木、林……ドングリの背比べ
滑り出しは上々に見えたものの、「学術会議」問題で大きく躓いた菅・新政権の支持率はあっという間に天井を打ち、どちらかと言えばやや右肩下がりの傾向である。「ご祝儀期間」はあっという間に過ぎ去り、自民党内からは早くも解散を危惧する声が漏れ始めている。大手紙のベテラン政治記者が言う。
「そもそも菅さんは地味なタイプでカリスマ性も乏しい実務調整型。今後、一気に支持率が回復するような展開が想定できない以上、自民党の代議士の多くは苦戦を覚悟し始めている。したがって、解散時期が少しでも遅いほうがいいと考えているのです」
実際問題、菅政権が即刻、解散に舵を切るのは難しい。取り組まねばならない最優先課題はコロナ対策の補正予算を組むことで、年内解散の余裕はないのだ。
衆院の任期満了は来年10月21日。つまり最大限、先延ばししても1年足らずで総選挙を迎えるわけだが、ずばり、次の総選挙はいつなのか。
「1月に召集される通常国会の冒頭解散は可能性としては残っているが、現実的にかなり薄くなりました。失業率が劇的に悪くなっているはずだし、来年度の予算がいつにも増して重要となっているに違いないからです。1月の解散がないのであれば、解散できるタイミングはかなり絞り込まれてくる。例えば、4、5、6月はほぼないと考えて構わないでしょう。それは、来年7月に東京都の都議会選挙が予定されているから。創価学会を宗教法人として認証しているのが東京都なので、都議選は公明党にとって絶対に負けられない選挙と位置づけられている。東京にある創価学会組織がフル稼働するため、都議選前の3カ月間は別の選挙をやらないでくれというのが、公明党からの強い要請なのです。となると、残る可能性は3つ。7月の都議選とのダブル選挙か、オリンピック・パラリンピックが終わった直後か、9月に自民党の総裁選挙をもう一度やったうえで、選ばれた新しい総理を前面に押し出して任期満了での選挙です」(同)
この3つのタイミングを比較すると、都議選とのダブル選挙はやはりアクロバットに過ぎる嫌いがある。一方、開催規模は縮小を余儀なくされるにせよ、やはりオリンピックは国を挙げての一大イベントゆえ、開催直後は与党の有利が見込まれるそうだ。
しかし、「自民党がフルスペックの総裁選挙をやった直後のほうがもっと有利です」というのは、自民党のさる中堅代議士。
「自民党総裁選の期間は、とにかくテレビで自民党を大宣伝できるのが大きい。当然、野党はかすんでしまう。しかも来秋の総裁選は、候補者が少なくとも5人以上乱立し、派手な戦いになることが想定されている。その激戦を制した新総理を旗頭に選挙となれば、まず大敗は考えにくい。気が早いことに、すでに次期総裁選に出馬する候補者たちの名前まで取り沙汰されているのです」
予想されるその顔ぶれは菅総理ご本人を別にして、順当なところで、まず今回も出馬した岸田文雄元外相(63)。今回は細田派、麻生派、竹下派、二階派など5つの派閥が「菅支持」で一本化した結果、大差で敗れたものの、少なくとも総裁選での政策論のクオリティでは菅総理を上回っていた。前出の政治部記者が解説する。
「岸田さんは、自分こそが安倍さんから後継指名を受けていたと自負しています。たまたま安倍さんが体調を崩した結果の辞任劇だったから、緊急避難で菅さんをリリーフさせただけであって、本格政権を担当するのは、党内を見渡しても自分以外にいないと思っているのです」
“施し票”を得て2位になったことも自信につながっているというのだが、逆に3位に甘んじた石破茂元幹事長(63)は、自派閥・水月会の会長を辞してけじめをつけた。これで、総裁選挙の出馬は消えたという見方もあるものの、先の自民党代議士は一笑する。
「いったん、けじめをつけたというだけで、もちろん推されれば出馬するのはやぶさかではないというのが石破さんのスタンスです。次期総理は誰がふさわしいかという世論調査では、常に先頭を走ってきたし、選挙直前の総裁選となれば、出馬しないほうがおかしいし、彼の人気にあやかろうという動きもあるので、本命候補の一人です」
人気者という点では石破氏に迫る勢いなのが河野太郎行革担当相(57)。自民党の第2勢力の麻生派に属し、歯に衣着せぬ物言いで物議をかもすこともある。菅内閣では行革担当という比較的、軽量級のポジションに就いたが、逆にハンコの廃止など、軽い政策で人気取りをしやすい立ち位置とも目されている。
「永田町では変人で通っているが、世間的にはそういった面があまり知られていないため、次の総裁選挙では必ず有力な候補者の一人となるでしょう。ふつうは閣内で大臣をやっていると出馬しにくいものですが、麻生太郎副総理と菅総理の人間関係には大きなしこりがあって、麻生派が菅総理に協力するのはこの前の総裁選がきっと最後。実は、2009年の麻生政権の末期、選対副委員長だった菅さんは、極秘裏に麻生おろしの動きをみせたと言われている。ですから、麻生派は河野太郎を総裁選に出馬させ、菅おろしをすることに何の躊躇もないはずです」(同)
自民党の第2派閥が動くのなら、約100人を擁する最大派閥の細田派はどうなるのか。
(後略)