記事(一部抜粋):2020年10月号掲載

経 済

菅内閣にとって最大の課題はコロナ対策と経済振興のバランス

【証券マン「オフレコ」座談会】

B 憲政史上最長となる7年8カ月にわたった安倍政権がようやく終わり、菅政権が誕生したけど、「アベノミクス」と「スガノミクス」の違いは何だろう?
C 経済政策じゃないけど、安倍は数カ月前、菅政権が誕生した場合の安倍政権との違いについて、「菅政権には菅さんのような官房長官がいないこと」と言っていた。
A それって最大の賛辞だよね。新型コロナウイルス対応で他人事のように言っていた加藤勝信前厚労相が菅内閣の官房長官に就任したけど、とても重責を担える資質があるとは思えない。
B ところで、権力のトップは自身の病状はひた隠しにするものなのに、安倍は病院通いを事前にメディアにリークしていた。これは前代未聞のことだ。
C それはたぶん首相補佐官兼秘書官だった今井尚哉の計らいだと思う。低支持率のまま政権を交代したら次の政権への影響力を保持することは難しい。ここは病状悪化を理由に「お涙頂戴」をやるしかないと。
A それなら、もう少し自重すればいいものを。持病の潰瘍性大腸炎の再発を理由に辞任会見を開いたにこかかわらず、それ以降は毎日のように会食の連続で、フランス料理のフルコースや150グラムのステーキをぺろり平らげたりワインを飲んだりと、とても病人には見えなかったという報道があった。
B それでも、体調が激変して麻生副総理が臨時に首相を代行するよりはよかったと思う。コロナ禍で経済が疲弊したなか、財政再建しか頭にない財務省のコントロール下にある麻生がトップになると、緊縮財政だけでなく増税だってやりかねなかった。
C だけど菅政権樹立に麻生派55票の協力を得たわけだから、財政再建のくびきからは逃れられないんじゃない?
A そうとも言えない。当選後、菅は「閣僚や党役員人事で派閥の要望は受けつけない」と明言し、支持を受けた最大派閥98票の細田派から「今井を今のポストに残してほしい」と要請されたというのに、「内閣官房参与」という軽職に追いやった。案外、派閥や省庁の影響力を排除しながら菅カラーを出していくんじゃないかな。
B 菅政権にとって最大の課題は何といっても、新型コロナウイルスの感染対策と経済振興のバランスを取ること。それに来年の東京五輪をどのような形で開催させるのか。
C それは全てにおいて今後の感染対策がカギを握る。菅の総裁任期は来年の9月まで。派閥という大きな支持母体を持たない菅としては、この1年間でコロナを封じ込める一方、経済活動を再開させ、さらに東京オリンピックを開催させないと次期総裁は望めない。
A 菅はコロナを感染症の指定から外すか、大きく格下げするかもしれない。通常のインフルエンザと致死率がさほど変わらないのであれば、格下げして、後は高齢者や糖尿病など既往症のある患者と感染者をいかに接触させないようにするかの対策さえしっかりやればいい。その対策を公務員中心の専門家会議に丸投げしないこと。緊急事態宣言で経済が止まっても給料が変わらない公務員に、コロナ対策と経済振興の両立などできるはずがない。
B 話を元に戻すけど、スガノミクスと言われているのは「携帯電話料金の引き下げ」と「ビザ発給の条件を緩和する観光立国」、「地方活性化のためのふるさと納税」、「行政の縦割りを打破し、行政機構のDX(デジタルトランスフォーメーション)を進める」、「地銀の再編成」、「労働力確保のための外国人労働者の受け入れ拡大」、それに「不妊治療の保険適用」といったところだ。
C 株式市場はとくに「行政機構のデジタル改革」を囃している。しかし、省庁間のITベンダーによる縄張り争いが激しいだけに、口で言うほど簡単に共通化は進まない。それより菅が「日銀との連携を強める」と言っている点に注目する必要があると思う。大規模金融緩和策(QE)による高株価政策を続けるという意思表示に取れる。
(後略)

 

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