記事(一部抜粋):2020年10月号掲載

経 済

菅政権で幕開け〝地銀再編最終章〟

【情報源】

 菅義偉政権がスタートしたが、経済政策はほぼ安倍政権を継承。“菅カラー”といえば中央官庁の縦割り打破、官房長官時代からこだわりを持つ携帯電話料金のさらなる値下げ圧力、そして「デジタル庁」の創設あたりか。なかでも安倍政権では不発に終わった規制改革や全省庁の組織に横ぐしを刺すデジタル庁、厚生労働省の分割を含む省庁再々編は、本気で取り組めば霞が関にとどまらず、それこそ政財界に大激震が走る。
 そして、菅首相の唱える「地方再生」の目玉が、地域金融機関の競争力強化のための地方銀行の再編だ。人口減少やマイナス金利による利ザヤの激減、金融のデジタル化という三重苦に喘ぐ地銀業界。実は旧相互銀行の第二地銀はピーク時から半減したが、地域のトップバンクである第一地銀はバブル崩壊や1990年代後半の金融危機を経ても長らく64行体制を維持してきた。ところが第一地銀といえども構造的な商圏の縮小やビジネスモデル崩壊の危機に直面していたところに、菅政権の誕生でにわかに再編圧力が高まってきた。
 再編に向けた布石も着々と打たれている。8月に公的資金注入の申請期限を4年間延長する「改正金融機能強化法」を施行。改正法は経営責任を求めず、返済期限も事実上撤廃して公的資金の注入を促進させる狙いだが、一方で優勝劣敗が鮮明になり、再編のトリガーにもなる。11月には地銀の経営統合や合併で独占禁止法の適用除外とする合併特例法が施行される。ハードルが高かった同一県内の地銀同士の経営統合の条件が緩和されることで再編を後押しする。特例法をめぐって抵抗する公正取引委員会と再編を進めたい金融庁との間で熾烈なバトルが繰り広げられたが、その調整役を担ったのが当時の菅官房長官だった。
 いよいよ第二地銀も巻き込んだ“地銀再編の最終章”の幕が開くことになりそうだが、その口火を切るのはどこなのか。注目地域としては、まずは「特例法第1号」と囁かれる東北の青森銀とみちのく銀。九州では宮崎銀の九州フィナンシャルグループへの合流とともに、大分銀の西日本フィナンシャルホールディングス、もしくは九州フィナンシャルグループ入りが取り沙汰されている。関東は足利銀と常陽銀(茨城)のめぶきフィナンシャルグループに続いて、地銀トップの横浜銀と2位の千葉銀が業務提携に踏み切ったインパクトは大きい。当面は群馬銀の出方が焦点になるが、「めぶきFGでは規模が小さいため、横浜銀─千葉銀連合と手を組むのでは」(メガバンク幹部)との観測が浮上している。県内では圧倒的なシェアを誇る上位地銀の静岡銀も将来的には縮小均衡は避けられない。そこで「自らが埋没しかねない首都圏の地銀グループとの連携よりも、東海圏の地銀、第二地銀との合従連衡に活路を見い出す可能性がある」(金融庁関係者)という。
(後略)

 

※バックナンバーは1冊1,100円(税別)にてご注文承ります。 本サイトの他、オンライン書店Fujisan.co.jpからもご注文いただけます。
記事検索

【記事一覧へ】