記事(一部抜粋):2020年8月号掲載

社会・文化

ヤクザを手玉「三井住友海上」代理店

保険会社から支払われる手数料をキックバック

(前略)
 大手損保会社の代理店が、暴力団の幹部から、保険に入ってくれそうな知人などを紹介してもらい、契約に漕ぎ着けるたびに暴力団幹部に「手数料」を支払っていたことが本誌の取材で判明した。反社とは一切の関係を持たないのが協会の指針であるにもかかわらず、逆に反社を積極的に利用して営業活動をしていたという事例である。
「代理店が保険商品を販売すると、保険会社から代理店に手数料が支払われます。その手数料の50%をバックするので、保険に入ってくれそうな人を紹介してほしい。そう持ちかけられました。こちらとしても多少でも実入りがあれば助かるし、協力することにしたのです」
 匿名を条件にこう打ち明けるのは、関東を拠点とする指定暴力団の幹部X氏。肩書は伏せるが、相当な地位にある大物ヤクザだ。
 そのX氏に話を持ちかけてきたのは都内で保険代理店A社を営むY氏だという。
「A社は今は都内に会社がありますが、もともとは埼玉の浦和を拠点にしていた。三井住友海上火災保険の商品を中心に扱っています。実績もそこそこあって三井住友海上の代理店としては上位にランクされていると聞いています」(X氏)
(中略)
 X氏によれば、この2年ほどの間に、親族や友人、知人をY氏に紹介し、Y氏は紹介された人に次々と営業をかけて契約をものにしたという。
 たとえば、都内で工事関係の仕事を手がけるB社は、それまで別の代理店を通じて保険に入っていたが、X氏にY氏を紹介されたのを機に、代理店をY氏のA社に切り替えている。B社を経営するB氏が言う。
「会社として入っている保険をすべてY氏に任せることにしました。以前の代理店には申し訳ないことをしましたが、Xさんには若いころから世話になっているし、いまはヤクザにとって厳しい時代。少しでもXさんのシノギの足しになればと思ったのです」
 B社は損保、傷害、賠償などの保険で年間600万円以上の保険料を支払っている。B氏はX氏の顔を立て、それをすべてY氏に託したわけだ。誤解のないように付け加えるとB氏は正真正銘の堅気である。
 ちなみにY氏がX氏に提示した「明細」によると、B社関連だけで保険会社(三井住友海上)からは年間百数十万円の手数料がY氏側に支払われており、その50%がX氏の取り分となっている。
 ヤクザとして相応の地位にあり人脈のあるX氏。その人脈を利用して保険契約を次々と結んでいくY氏。保険会社から入る手数料を折半するという約束がきちんと守られているかぎり、両者はWin─Winの関係を続けることができたに違いない。
 だがある時、Y氏の“裏切り”が発覚したという。
(後略)

 

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