6月17日に閉会した通常国会で政府は公的資金を受け入れやすくする金融機能強化法改正案を成立させた。地銀や信金、信組など地域金融機関を念頭に公的資金で資本支援することで、地域経済への資金供給の円滑化を促すのが狙いだ。
改正案の最大の特徴は、経営責任の明確化や収益目標の設定を省ける特例を設けた点にある。従来の金融機能強化法でも、金融当局は公的資金の申請がやりやすいよう、経営責任を厳格に求めない旨を口頭ベースでは表明していたが、今回の改正で法的に明確化されたことにより、より申請しやすくなった。
また、公的資金を申請できる期限も2022年3月から26年3月まで4年間延長するとともに、資金枠も12兆円から15兆円に増額する。改正法は8月にも施行させたい考えだ。
金融機能強化法を改正する狙いは、いうまでもなく新型コロナ禍による地方経済の落ち込みを金融面で下支えすることにある。コロナ禍の経済への影響はどこまで拡大し、またどこまで長引くか、一向に見えない。その間に経済の血流である金融に目詰まりが生じることになれば不測の企業倒産の急増を招きかねない。その弊害を地域金融機関の資本面から除去しようというのが改正案の肝と言っていい。公的資金で「地域金融機関の資本バッファ」を担保するわけだ。
地域金融機関の置かれた現状は、超低金利の継続、人口減少などを背景に厳しさを増している。そこにコロナ禍が重なったため、収益環境はさらに悪化するのが確実だ。それをなんとか食い止めるため、地域金融機関は必死になって地域経済、企業を支えるべく資金供給に努めている。結果、与信費用が増加することは避けられない状況になっている。
すでに2020年3月期連結決算で、上場地銀78行・グループのうち、7割を占める57行が前の期に比べ減益もしくは赤字になっている。赤字が継続すればいずれ資本も食いつぶす事態に陥りかねない。改正法はそうした事態を想定して、期限を延長し、資金枠も増額した。
(中略)
今回のコロナ禍で地域金融機関の取引先の倒産や廃業が急増するのはこれからだ。にもかかわらず、地域金融機関の引当がそれほど進んでいないことが危惧されている。あるアナリストの試算によれば、地方銀行の与信費用の見込みは貸出総額の0・2%程度にとどまっている。経営環境が厳しく思うように与信費用を盛り込めない地銀は少なくない。金融庁は9月の中間決算を控え、資本不足に陥る地域金融機関が出る可能性があると見て身構えている。
(後略)