記事(一部抜粋):2020年6月号掲載

連 載

【コバセツの視点】小林節

「カジノ」問題の本質を考える時間ができた

 地球規模で猛威をふるっている新型コロナ禍であるが、私たちは皆、それぞれの不自由な立場で、人生について改めて考え直す機会を得ているように思われる。
 そんな状況の中で、5月13日に、突然、「カジノ業界最大手の米国ラスベガス・サンズが日本への参入計画を撤回した」というニュースが飛び込んで来た。
 それに対して、市の幹部公務員は「大丈夫だ」「事業者は(他にも)いっぱいある」などと反応しているとの報道である。これは、恐るべき愚鈍というか、状況の変化を見ながら自分の頭で考えることのできないその者達の思考能力の低さを示している。市政が自ら財政破綻を招き、あげく、博打に縋ろうとした発想の原点を見たような気がした。
 米国のビジネスマンの立場で考えてみれば、答えは明白である。
 ①カジノは、小金持を密室に招き入れ心の隙をついて一晩で全財産を巻き上げることができる、洗練された恐ろしいシステムである。その本質は、全ての先進国で刑法で禁止された「賭博罪」である。それが法律により例外的に合法化されたのは米国のマフィアと堕落した政治家の談合の結果で、その史実は公知である。②カジノは、個人の財産(その原資は所得か遺産)を巧みに収奪するだけで、実は、社会にとって何も生み出してはいない。単に博打による富の再配分にすぎない。そしてその上納金で市財政を潤わせようという発想自体が邪道である。しかし、カジノ業者にとってはそんな事はどうでもよく、日本国がカジノを合法化した以上、豊かで免疫のない巨大市場ができたのだから、参入しようとして当然である。③ところが、予期せぬコロナ禍で、「三密」の典型であるカジノは、世界中で「カモ」が寄り付かず、軒並み赤字に転落してしまった。④今になってラスベガス・サンズは「1兆円以上の初期投資は、日本の条件である10年間の免許では回収できない」などと撤退の理由を述べている。しかし、そんな事は、他国で20年か30年の契約でやって来た同社が頭初に計算できなかったはずはない。その点は私の推論では次のようになる。元々は大阪に参入しようとしていたラスベガス・サンズが東京・横浜に目標を変えたのは、日本第三の都市よりも第一+第二の都市の方が大きな儲けが期待できるからである。しかもトランプ大統領と昵懇な同社社主は、トランペット(トランプのペット?)と呼ばれる安倍首相の一番の腹心で後継者にも擬せられた菅官房長官の地元・横浜が一番与し易いと考えたのであろう。安倍・菅体制に繋がっていれば獲得した免許を30年に延ばすことなど、当時はた易いことに見えたはずである。⑤ところが、最近になって、トランプ政権も安倍政権も命運が尽きかけているように見える。加えて、菅長官が、元より首相の器でないことは客観的に明白だが、加えて安倍首相との信頼関係が壊れたように見える。
(後略)

 

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