記事(一部抜粋):2020年5月号掲載

社会・文化

度を超えたNHKのバッシング報道

ターゲットにされたレオパレス21

「窮鼠猫を噛む」のたとえは、紀元前の中国でおこなわれた塩と鉄の専売をめぐる議論の中で生まれたという。時代も事情もまったく異なるとはいえ、今回、猫の立場となったのが、電波という公共財産を“専有”するNHKだったのは奇妙な一致ではないか。
 一方、追い詰められたネズミの役は、サブリース業界の大手の一つに数えられながら、この2年、施工不良や村上ファンドの株買い占めで揺れに揺れ、フラフラになった「レオパレス21」。天下のNHKがサブリース業者に噛みつかれそうになった経緯は何なのか。
 コロナ禍が日に日に猛威をふるい始めた3月19日、サブリース業界全体が注目していたドキュメンタリー番組が放映された。NHKBSの『あなたのアパートは大丈夫?〜岐路に立つ投資用不動産ビジネス』というタイトルの番組である。この放映のための取材の一環としてNHK側は、事前に業界の大手5社に「サブリース業界は今後どうあるべきか」という趣旨の質問をし、その回答を求めた。これに真面目に答えたのが、積水ハウスと大和リビング、レオパレス21の3社で、残りの大東建託と東建コーポレーションは回答しなかったという。影響力の強いNHKのドキュメント番組への対応が業界内で真っ二つに分かれ、そのうえでどんな番組になるのかが話題になっていたわけだ。
「フタを開けたら、レオパレス21だけをバッシングする内容だったので驚きました」と感想を語るのは、レオパレス21でアパートを建設した首都圏のあるオーナー。
「番組の提示したサブリースに対する問題意識に大きな間違いはなかったと思います。例えば、なぜ人口が減っている日本で新しいアパートがどんどん建つのかとか、30年の家賃保証をセールストークにして営業しているのに、10年が経過したら家賃の減額を通告されることとか、そもそも営業マンが強引なところとかね。その結果、予定の家賃が入らなくて困ってしまった大家さんが存在することも事実でしょう。しかし、あの番組の酷いところは、そんな風に網羅的にサブリース業界の問題点を扱っていながら、番組の中で何度も名前を出したのがレオパレス21、1社だけだったことです」
 オーナーが続ける。
「レオパレスは確かに施工不良問題で世間を騒がせました。しかし、工事が遅れているとはいえ、今も無償で修繕をしているし、社長も辞任した。一応、企業としての責任もとって内部留保を吐き出し、株価も暴落しているわけです。溺れた犬は叩けというマスコミによくある手法なのかもしれませんが、この番組は、最初からレオパレス21を特別に悪く印象づけようとしているように思えました。色々なケースを取材しているのに、レオパレス以外の企業名は出さず、レオパレスだけを晒し者にした感じ。その結果、レオパレス21が業界の中で突出して悪いブラック企業であるかのような、非常に不公平な印象を視聴者に与えてしまった」
 このオーナーが一つの象徴として挙げるのが番組の冒頭。
 少し再現してみると、郊外の道を走るクルマから撮影する映像が流れ、やがてカメラは畑の中に建つ幾棟ものアパートを捉える。
《去年9月、三重県津市。街の中心部からクルマで10分ほど走ると、突然、畑の中に縞模様の建物が……》というナレーション。ここに取材に応じる大家さんと思しき人の声で、
「アパートだらけなの。レオパレス、レオパレス、レオパレス、レオパレス……」
 さらにナレーションは、《ここは通称レオパレス銀座。10年ほど前は田畑だった1キロ四方の場所に賃貸住宅大手レオパレス21のアパートが40棟近く建っています》と続く。放送開始から1分ほどで、レオパレスというフレーズが6回連呼され、アパートの前にモザイクの掛かった仮名の大家さんが登場。ナレーションが《(アパートの)建設費は38部屋で2億2000万円。そのほとんどを金融機関から借りています。ところが……》と注意を引いたところで、取材する記者が「人の気配がまったくしない」、これに大家さんが「そうですね、今、入居の募集をやめているので、ほとんど空っぽです」と答える。
 素直にこの映像を見れば、金融機関から2億円もの借金があるにもかかわらず、入居者がいなくなってしまったアパートオーナーは、借金返済に困窮し、追い詰められているかのように受け取れるはずだ。しかし実際は、このオーナーが家賃をもらえずに困っているという内容は最後まで出てこない。
 前出のオーナーが続ける。
「レオパレスは、施工不良が原因となった空き部屋にも家賃を支払っているはずです。そもそも、空き部屋であっても家賃を払うのがサブリースなんですから、あの大家さんも入居者が居るか居ないかに関係なく、部屋数分の家賃を受け取っているわけです。それなのにその状況を意図的に省いて、空き家ばかりのアパートで大家さんが困っているような報じ方をするのはフェアとは言えないのではないでしょうか」
 実はレオパレス21側にとって納得できないシーンはこれだけではない。番組にはサブリース業者と契約してアパートを建てた後、困った事になったと窮状を訴えるオーナーが複数人、登場する。
「死のうかと思いましたよ」と苦悩する年金生活の女性や、家賃の減額のために銀行ローンが払えなくなったオーナー……。さらには苛烈な営業を後悔する元営業マンなども出てきくるのだが、当事者となった企業名が伏せられたため、全てレオパレス21の関わる案件と誤解を生みかねない内容になっていたのだ。
 サブリース問題の専門家として、この番組に登場した弁護士は、大東建託とオーナーの間に起きたトラブルの相談に乗っていて取材に応じたが、番組に大東建託の名前が一切出てこなかったことに違和感を持ったという。
(後略)

 

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