記事(一部抜粋):2020年2月号掲載

連 載

【平成改め令和考現学】小後遊二

極端な国家元首たちを集合知で葬り去ろう

 歴史を紐解けば極端な独裁者の事例に事欠かない。近代だけでもヒットラー、フランコ将軍、毛沢東、ウガンダのイディ・アミン、イラクのサダム・フセイン、カンボジアのポル・ポトなどが挙げられる。ジョージ・W・ブッシュが悪の枢軸と名づけた3カ国のうち、イラクは独裁者を除去したら以前に劣らぬ混乱が残り、現在の中東の不安定材料になっている。北朝鮮は世襲制独裁者3代目の下、人民は増々困窮している。イランはトランプの気まぐれアタックでソレイマニ司令官を殺害され、群衆が「アメリカに死を!」と街頭に繰り出したが、ウクライナの民間旅客機を革命防衛隊が誤爆し、それを3日間惚けていたことが分かって、群衆の怒りはハメネイ師に向かっている。
 ロシアのプーチンは20年間ルールを変えながら君臨し続けているが、支持率が30%くらいに低迷しているメドベージェフ首相を下ろして新内閣に憲法改正を断行させ延命の口実を探すだろう。それがうまくいかなければ最終的には隣国のベラルーシ(ルカシェンコが26年独裁を続けている)と合併して新しい連邦国家をつくり、その元首として24年以降も君臨し続けるのではないだろうか。
 トルコのエルドアンも首相の頃は良かったが、大統領になってからは疑問符のつく行動が目立つ。トルコはEUのメンバーだが、ロシアや中国とも天秤にかけるので、他国にとっては扱いが厄介な、国民から見たら権力欲に取り憑かれた独裁者になってしまった。そのEUの中ではハンガリーのオルバンが強権政治を展開し始めた。おそらく移民・難民排斥などのポピュリズム政策は失業者の多い現状では支持されるだろうから、しばらくは他のEU諸国は手が出せないだろう。
 フィリピンのドゥテルテは麻薬取り締まりで5000人近くを殺害したと言われているが、人気は落ちていない。国際的にはあまり尊敬されていないが、フィリピンではこのような独裁者が好まれるのかもしれない。
 指導的立場にあるアメリカの大統領も、議会を無視し、閣僚や対立野党をツイッターでこき下ろし、次の選挙で勝つことだけを念頭に外国を叩きまくる。アメリカ製品をフォアグラのように腹一杯食わせようとし、NATOに対してもGDPの2.5%まで国防予算を増やせと迫る。NATOは冷戦下でアメリカを助けるために創設されたのに、軍事支出が足りなければNATOと決別する! とトランプは宣う。アメリカがNATOから出て行けばEUはロシアとは仲良くやっていくだろうから、そもそも軍事費の問題ではなくなる。トランプに代わるもう少し穏健な大統領が出てくるまで優柔不断でいよう、と今ではEUの首脳たちも開き直っている。
 トランプは仲が良かったはずの金正恩に対してもベトナムでの会談途中に一方的に破談にしてしまった。それが少しやり過ぎたという反省からか日本と韓国を訪問した余興に38度線を跨いで金正恩と握手、会談をやり直している。しかし一向に制裁を解除しないので北朝鮮の経済は疲弊し、金正恩は改めて核とミサイルをちらつかせるようになった。トランプは中国との貿易交渉で「うまくいった。ビッグディールだ」と発表した50分の演説の中で「中国が仲介してくれるかもしれない」と思いつきのような発言をしている。彼のスタッフが暴君金正恩への「鼻血作戦」を考えるところまで来ているのに、本人はあくまで自分が主役で北朝鮮とのビッグディールを演出しようとしている。
 その中国の習近平も後継者を指名せずに任期のタガを外して皇帝化。香港でさえ問題視されている一国二制度を台湾にも当てはめて統一していくと公言している。
 サイバー時代には民衆が暴君の行き過ぎを抑えると期待されたが、現代の暴君はそのサイバーを使って議会やマスコミとの対話をスキップし、ますます良識の軌道を踏み外している。期待された「民衆の集合知」が暴君を葬り去ることを今年の初夢としたい。

 

※バックナンバーは1冊1,100円(税別)にてご注文承ります。 本サイトの他、オンライン書店Fujisan.co.jpからもご注文いただけます。
記事検索

【記事一覧へ】

ベルダ編集者ブログ

編集者ブログ 最新3件

富士見&花見ツーリング

by 2020/04/05

2020年の初ツーリング

by 2020/01/13

2020年山始めは伊豆ヶ岳から子ノ権現へ

by 2020/01/05

>>Read more