記事(一部抜粋):2020年2月号掲載

経 済

業界再編を促す第二のビックバン

ネット証券「売買手数料ゼロ」狂騒曲

 昨年末からインターネット証券で投資信託や株式の売買手数料を無料化する動きが一気に広がっている。口火を切ったのは外資系大手のフィデリティ証券だった。
 フィデリティ証券は昨年12月から、取り扱う45の運用会社による656の投信すべてを対象に、顧客が売買するたびに生じる販売手数料を撤廃した。インターネットで取引し、運用報告書などを電子交付することが条件となるが、この決定が業界に与えた衝撃は大きかった。「黒船来航」と国内のネット証券幹部が悲鳴を上げたほどだ。
 指をくわえていては、瞬く間に資金が流出しかねない。危機感を抱いたネット証券各社は一斉に売買手数料の無料化に動いた。12月2日には松井証券が投信売買の無料化を発表、これにマネックス証券や楽天証券などが追随し12月10日までに大手ネット証券がほぼ無料で横並びとなった。
 投信の販売ではネット証券と競合するネット銀行も無料化に舵を切った。ソニー銀行は1月、取り扱うすべての投信を対象に手数料を無料化したほか、ジャパネット銀行も手数料ゼロの投信を増やす方針だ。
 こうした無料化の波は現物株や信用取引、ETF(国内上場投資信託)にも広がっている。
 auカブコム証券と松井証券は昨年末までに信用取引の売買手数料を撤廃した。さらにauカブコム証券は、現物株取引でも手数料の撤廃に着手する計画だ。
 auカブコム証券は12月に主要インターネット証券で初めて信用取引の手数料をゼロにし、年明けには投信とETF(上場投資信託)の手数料ゼロ化に踏み切った。そして今度は現物株取引の手数料を大幅に引き下げ、顧客の反応を確認したうえで、2020年度中にも無料化に踏み込む意向だ。
 また、ネット証券最大手のSBI証券も12月16日からすべての投資信託の販売手数料、ETFとREIT(不動産投資信託)の信用取引手数料、私設取引システム(PTS)の夜間取引手数料をそれぞれ無料化した(信用取引とPTSは事後にキャッシュバックする)。同社は昨年10月の時点で「3年後に現物株式を含む手数料をゼロにする」(SBIホールディングス・北尾吉孝最高経営責任者)と表明していた。
 無料化の動きが広まった背景には「投資信託や信用取引は売買手数料以外の収入チャネルがあるので、追随しやすかった」(ネット証券幹部)という事情もある。投資信託は売買手数料以外に、運用手数料にあたる「信託報酬」があり、信用取引は信用供与による金利収入がある。とくに投資信託の信託報酬は運用資産残高に応じて得られることから、「売買手数料をゼロにしても、その分ボリュームが増えれば賄える」(同)という算段だ。
 しかし、各社が一斉に無料化に動いたことで、当座の収入減は避けられそうにない。証券会社全体の株式や投信の収入は、純営業利益の24%(2019年3月期)を占める重要な柱なだけに、「競争激化によって脱落する証券会社が出てくるのは必至。まさに体力勝負の様相を呈している」(証券会社幹部)という。
 売買手数料無料化は業界再編、合従連衡の起爆剤となりかねないというのだ。
「株式売買委託手数料の自由化に次ぐ第二のビックバンです。この波はネット証券だけでなく、対面営業を中心とした大手証券会社も飲み込むインパクトを秘めている」(同)
 一方、無料化の口火を切ったフィデリティ証券は、投資や運用のアドバイスの対価として「運用助言手数料」を設定、新たな収益源にする計画を持っている。auカブコム証券も新たな収益源として、自社で開発する証券システムの外販を強化するほか、株主のKDDと連携して広告などのデータビジネスも始める計画だ。
 古い世代の顧客には、いまだに証券会社を「株屋」と呼ぶ向きが少なくないが、証券会社は有価証券を売買するブローカーから、資産運用の助言プロフェッショナルへ脱却する日が近いのかもしれない。ネット証券による売買手数料の無料化はその流れを先取りしているようにも見える。
(後略)

 

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