今年3月、お茶の間の話題をさらった「致死量100倍の覚せい剤を女性に与え殺害したとされる事件」をご記憶だろうか。
この事件が話題になったのは、死因が一般人にはまず入手が困難な覚せい剤という物騒なものによることも一因だが、投与したとされるのが69歳の高齢男性で、亡くなったのが孫ほど年齢の離れた28歳の女性だったことが主因だろう。しかも、犯行現場が高齢男性の自宅で、二人の間にどんな接点があったのかなど、不可解な点がいくつもあったことが世間の関心を集めた。
3月6日、警視庁に殺人と覚せい剤取締法違反(使用)の各容疑で逮捕、そして同月27日、殺意はなかったとして傷害致死容疑で起訴されたのは石原信明被告。新聞やテレビは亡くなった女性のプライバシーに配慮して明確には報じなかったが、石原被告は「会員制交際クラブ」を通じて被害女性と知り合った。そして彼女が石原被告の自宅に4回目の“出張”をした際に事件は起きたのだ。
「そのデートクラブはVIPだと年会費だけでも50万円。女性とデートする度に10万円の紹介料を払わなければならない。それだけに登録している女性は皆、美人でした。ちなみに被害女性は既婚者でした」(取材した記者)
要するに、石原被告はカネで若い女性を買ったものの、それだけでは物足りず、女性の飲み物にこっそり覚せい剤を入れて楽しもうとしたところ、その投入量を間違えた結果、死に至らしめたということのようだ。
(中略)
この欲望丸出しの高齢男性による卑劣な事件、起訴後はまったく追加報道が出ていないが、筆者のもとには石原被告とトラブルになっていた複数の関係者から情報提供があった。
それは石原被告の人間性を浮き彫りにするとともに、社会的に重大な問題も含まれていることから、今回、敢えて報じることにした。
まずは判明している石原被告の経歴を紹介しておこう。
広島県生まれの在日韓国人。韓国人妻との間に二人の息子をもうけているが、近年は一人暮らしだったという。長年、地上げなど不動産関連の仕事に従事していたが、何を思ったか、58歳にしてシニア枠で国士舘大学大学院(経済学部)に入学。61歳で税理士免許を取得している。
不動産会社「さつきエステート」、経営コンサルタントの「石原コンサルタント」(共に東京都渋谷区)の代表に就いていた石原被告は、事件現場となった渋谷区神泉町の豪邸(地下1階地上3階。敷地約85坪)を2011年に購入、その後、伊藤忠商事東京本社と青山通りを挟んだほぼ対面に二つのビル(4階建てと2階建て)を購入している。
(中略)
そして、その無法ぶりがハッキリわかるのが、この南青山の4階建てビルが違法建築である事実と、その手口だ。
石原被告は2015年、自身が代表を務める前出さつきエステートが原告となり、隣地を所有するK社を相手取って、建物建築差止請求事件を起こしたが、敗訴している。
原告の主張は「自分は隣地の定期借地権を持っているから、建物の建設は罷りならん」というものだった。
「石原の4階建てビルは2000年12月に建てられたものですが、この隣地の空き地分(実際は05年2月まで使われていない建物があったが、区の指導でようやく取り壊しに)のスペース(借地権)あってこそ建築は可能。スペースがなければ建ぺい率の関係で2階が限度です。ところが石原は、勝手にこの土地を借りたことにして建設申請し、違法に建築したようです」(関係者)
筆者の手元に、この建築申請をした際に港区に提出した「建物計画概要書」がある。それによれば、4階建てビルは「清水」なる個人が建てるということで申請がされており、その際、確かにこの隣地も建物の敷地としている。
そして00年6月に建設が認可されているのだが、先の民事訴訟における石原被告の「証人尋問調書」を見ると、その後、このビルは「自宅」から「賃貸ビル」に替わり、12年7月に石原被告が経営するさつきエステートに所有権、借地権が譲渡されている。
一方で、この前所有者で建築主の「清水」は、石原被告の部下だったこと、前出「建築計画概要書」に記された工事管理者は石原被告が代表の前出「石原コンサルタント」だったという事実がある。
ある建設コンサルのプロはこう証言する。
「賃貸ビルなら、住宅と違いもっと構造を堅固にし、簡易でなくキチンとした火災報知器、非常階段の設置などが必要で、それにはコストがかさみます。そこでまず子分の清水に、隣地を借りているとの偽造書類を港区に出させて、4階建て、しかも自宅用として申請させ、その後、頃合いを見て自分の会社に所有権を移転させたのでしょう。違法建築というのは実際には“建てたもの勝ち”。この件でいえば港区、そして国土交通省にいくら訴えても、指導はできても強制力はないのが実態ですから」
このため、都内などにはいまもそこかしこに違法建築物が溢れているのだという。しかも、火災や地震が起きた際には、逃げ場がない、耐震性が劣るので崩壊しやすいなど、被害の拡大を招く恐れもあるのだ。
(後略)