記事(一部抜粋):2019年9月号掲載

社会・文化

多種多様「半グレ」のシノギ

【情報源】

 吉本興業の芸人による反社会的勢力が絡んだ“闇営業”問題は前代未聞のお家騒動にまで発展、社会問題化した。いうまでもなく、芸能界と暴力団は長らく切っても切れない関係にあった。たとえば3代目山口組の田岡一雄組長が設立した神戸芸能社は戦後の多くの大スターを抱え、地方興行を仕切ったり、稼げない時期の芸人の面倒を見てきたという。吉本興業も「創業者が人気芸人を取り込むために山口組2代目の協力を得ていた」(警察関係者)というように創業時から反社とは密接な関係にあり、同社の中興の祖である林正之助元会長と田岡山口組3代目組長との付き合いはつとに知られる。
 一方で、現会長の大崎洋氏は反社との決別に本腰を入れてきた。その過程で2007年には反社をバックにした創業家と経営陣の内紛が勃発。09年に反社勢力の排除のため上場廃止に踏み切った。その後も11年には島田紳助が暴力団関係者との交際を理由に引退に追い込まれている。そして今回、複数の所属芸人の反社からの金銭授受が発覚、芸能界と反社の“深い闇”を改めて浮き彫りにした。
 今回の件でクローズアップされたのが反社勢力である「半グレ」。半グレとは暴力団に属さずに犯罪を繰り返す集団のことで、当初のメンバーは1950年代の暴走族上がりが多く、離合集散を繰り返しながらグループを形成してきた。その代表格が東京・六本木、西麻布が地盤の関東連合、中国系のチャイニーズドラゴン、関西の強者などで、暴力団対策法や暴力団排除条例の施行によって衰退の一途を辿る暴力団に代わって全国で勢力を拡大させてきた。彼らは暴力団のような組織を持たず、暴対法の適用外だったことから警察も実態を把握できなかった。ところが、12年の関東連合による六本木クラブ殺人事件を契機に13年に警察庁が半グレ集団を「準暴力団」に認定、関東連合は事実上、消滅している。
 その後も半グレ集団は、関東連合の残党を含めて大半が暴力団と距離を置きながら存在感を増す一方、様々なビジネスへ参入してきた。かつての半グレのシノギ(資金獲得活動)といえば、違法ドラッグや偽ブランド商品の売買、飲食店経営などが主流だったが、最近はとにかくバリエーションに富んでいる。半グレは暴力団と比べて年齢が若く、インターネットによってあらゆる情報を駆使、ITやスマートフォンを巧みに操って仮想通貨や出会い系サイト運営、ネットを悪用した投資詐欺などによって資金を得ている。
 実は、半グレが本格的にビジネスに手を染めるきっかけは2000年前後のITバブルだった。この時期に六本木界隈を中心に新興企業経営者や資産家、芸能界の人脈を築き、先端ビジネスのノウハウと資金を吸収していったのだ。もちろん、現在でも振り込め詐欺や金密輸などが横行、暴行や恐喝の武闘派も存在する。しかし、一部ではあるもののITや医療、再生可能エネルギーなどの新興ベンチャーへ出資し、IPO(新規公開株)によって多額のキャピタルゲインを手中に収めたり、「暴力団系の密接交際者らとともに監査法人や弁護士などとタッグを組んで、株価操縦や多重リースなどで資金を稼ぐケースもある」(金融関係者)ようで、半グレのシノギも二極化が進行している。
 それから最近目立つのが脱毛などのエステティックサロン。
(後略)

 

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