記事(一部抜粋):2019年9月号掲載

経 済

ZOZO成長鈍化と資金繰りリスク

売れれば売れるほど運転資金が不足する……

(前略)
 前澤社長は、現在もZOZO株を1億株以上持つ筆頭株主で、発行済株式の35%を保有している。しかし、これまではその株のほとんどが金融機関に担保として取られていた。
 例えば今年7月時点までは、野村信託銀行を初めとし、三井住友、みずほ、りそなや外資系銀行まで含め、総計8340万株が担保に差し入れられていた。これは前澤社長が持つZOZO株の実に7割以上にあたる。
「ところが、8月になって前澤さんは3回、大量保有報告書の変更届を提出。そのいずれもが、金融機関から担保の株を引き上げるという動きでした。具体的には、野村信託銀行やりそな、三井住友、さらにスイスの首都チューリッヒにあるジュリアス・ベア銀行に預けていた約1800万株を引き出したのです」(同)
 これによって、担保株のトータルは6500万株となり、保有する株式に対する担保株の割合も6割以下に下がったのである。
 担保の株券が少なくなれば、それだけ手元の株券が増えることになる。この措置によって、1株2000円として、計算上、前澤社長の手元に時価360億円以上の株が戻ったことになるわけだ。
 これなら、気分が高揚するのもうなずける話だが、一方で、禍福はあざなえる縄のごとし。株は別として、ZOZOの本業のほうには、まだ不安がつきまとっている。
 苦言を呈するのは大手新聞の経済部デスクである。
「7月末に発表された2020年3月期第1四半期の決算内容は、パッと見、悪くありません。前年同期と比べて、商品取扱高も売り上げも増加していますし、それに伴って営業利益が32%も増えて77億円。つまり増収増益です。しかし、その内容をよく見ると、営業利益が大幅に改善したのは、プライベートブランド事業の失敗の後始末でPR関連費用が大幅に削減できたことが一つの理由です。決して素直に喜べる状態ではありません。最大の問題は商品取扱高の伸びが失速したこと。この点に失望した投資家は少なくなかったのです」
 数字を見てみると、商品取扱高が前年同期比で12.5%プラスになっているものの、昨年は18%以上の伸びを示していたし、一昨年はもっと伸びしろが大きかった。さらに年間購入者数は、今年の1〜3月に比べ、4〜6月はわずかながらも減少。広告宣伝が少なかったという言い訳はあるにせよ、購入者の数が減った現実は、躍進が当たり前だった前澤社長にとって目の前が真っ暗になるような停滞に感じられたはずだ。
「これまでアパレルメーカーはZOZOに約30%という、かなり高い販売手数料を支払って商品を売ってきました。本来、アパレルの粗利率は20%弱ですから、厳密には割の合わない商売だったわけですが、それでもファッション好きが多く集まるZOZOのプラットフォームに頼れば、メーカー側も在庫を処分して現金化できるという旨みがあったのです。しかし、インターネットで服を売ることが目新しくなくなってしまった現在、アパレルは独自にインターネット販売を始め、それがZOZOの客足に響いたのではないでしょうか」(同)
 年初から繰り返し「ZOZO離れ」がニュースとなるたび、ZOZOの顧客はZOZO以外でもインターネットで服が買えることを認識し、積もり積もって成長の鈍化につながっているという分析だ。
 さらにもう一つ、大きな懸念材料は、ZOZOがやっているツケ払いによる資金ショートのリスクだという。
(後略)

 

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