大衆薬から化粧品、食品、日用品と取扱商品を拡大して成長を続けてきたドラッグストア業界。いまや市場規模は7兆円を超え、コンビニエンスストア業界と肩を並べる。ところが、品揃えの均一化でコンビニやスーパーとの差別化が曖昧になり、商圏も重複してきたことから、減速感が鮮明になってきた。業界大手のココカラファインをめぐるマツモトキヨシHDとスギHDの争奪戦も、背景には出店ペースや利益の鈍化、さらにネット通販の台頭や他業態との競争激化に対する危機感がある。
ドラッグストア業界の売上高ランキングをみると、トップはツルハHD(7824億円)。2位はウエルシアHD(7791億円)、3位がコスモス薬品(6100億円)、4位がサンドラッグ(5880億円)。そして5位がマツモトキヨシHD(5759億円)、6位がスギHD(4884億円)、7位がココカラファイン(4005億円)と続き、年商4000~7000億円規模に7社がひしめき合う。マツキヨとスギのココカラ争奪戦は8月末には結論が出そうだが、どちらに軍配が上がっても新会社は業界トップに躍り出る。
ここ数年、ドラッグストア業界は大手による中堅以下の買収が主流で、大手同士の再編は皆無だった。しかし、飽和状態が近づくなか「開拓余地の大きい調剤部門の取り込みが雌雄を決する」(業界関係者)とみられ、今後は人材確保やIT投資のための総合力が問われることになる。そうであればスケールメリットを狙った大手の合従連衡は避けられず、コンビニがほぼ3社に集約されたように、この業界もゆくゆくは3社程度の大手に淘汰されるとみるべきだろう。今回のココカラ争奪戦はあくまで序章であり、これを呼び水に大型再編の幕が切って落とされる公算が大きい。
その場合、カギを握りそうなのが流通大手のイオン。「トップと大きく水を開けられるイオンの子会社で業界2位のウエルシアHDと、同じくイオンが筆頭株主のツルハHDが急接近する」(金融関係者)とのシナリオが浮上、経営統合が実現すれば1兆6000億円規模のメガストアが誕生する。もちろん独立系のコスモス薬品やサンドラッグの戦略からも目が離せず、ココカラ争奪戦に敗れた方も手をこまねいてはいないだろう。
(後略)