日本政府が7月4日から実施している対韓輸出管理体制の強化。半導体やディスプレイの製造に必要な感光材(レジスト)、エッチングガス(フッ化水素)、ディスプレイ用樹脂材料(フッ化ポリイミド)の3品目について、従来の簡略な手続き(包括輸出許可制度)を改め、個別に輸出許可申請を求めて輸出審査を実施する方針に切り替えたのだが、当初、この問題に対する新聞各紙の社説はハッキリ分かれた。
産経新聞は「対韓輸出の厳格化 不当許さぬ国家の意思だ」と日本政府の方針を支持したが、日本経済新聞は経済重視の立場から「元徴用工めぐる対抗措置の応酬を自制せよ」、朝日新聞も「対韓輸出規制『報復』を即時撤回せよ」と批判的だった。
たしかに、日本はこれまでこうした“報復的”な措置をあまりとってこなかった。むろん、それが日本の国益にかなっていればいいのだが、必ずしもそうとは言えないのが現実だ。いざという時には日本もやると思わせたほうが国益になる場合もある。それが国際交渉のリアルな現場だ。
朝日は日韓関係の悪化を心配するが、ここまで拗れさせた責任はむしろ韓国にある。この期に及んで「日韓両政府は頭を冷やす時だ」と日韓両政府の責任にするのはむしろ無責任というものだろう。
国際的には西側先進国を中心に各国の間で、軍事転用可能な物資が危険国に流出しないよう、輸出管理をしっかりやることが合意されている。各国がそれぞれの責任と判断によってこの国際合意を履行している。厳正に個別審査をおこなうのが「原則」だ。ただし、特別に信頼できる相手国向けの輸出には特例的に簡便な手続きを認めている。その特別に信頼できる国を日本では「ホワイト国」と呼んでおり、アジアの中では韓国だけがホワイト国だった。韓国をホワイト国に指定したのは2004年なので、今回の措置で04年以前の状態に戻したということだ。
韓国はWTO(世界貿易機構)に提訴すると反発しており、7月24日にはWTOの一般理事会で日本政府への批判を展開したが、それは日本政府としても想定内だろう。今回の措置は貿易の枠組みの変更ではなく、各国政府に委ねられた手続きの変更にすぎない。そもそも安全保障に関してはWTOの例外扱いになっており(GATT21条)、仮に韓国が提訴しても、費用と時間の手間がかかるだけで、勝ち目がないのはハッキリしている。
徴用工問題やレーダー照射事件など韓国側の暴挙に対し、日本もようやく「普通の国」らしい行動がとれるようになった。その意味では韓国に感謝しなければならないのかもしれない。
(中略)
文在寅大統領は「韓国企業に実害が発生した場合、政府としても必要な対応を取らないわけにはいかない」と述べている。また、「そうなるのを望まない」とも続け、日本側の措置撤回と両国間の「誠意ある協議」を求めている。韓国側はどの程度、事の重大性を認識しているのか。
文大統領は「前例なき非常事態だ」という。表向きは深刻に受け止めているようだが、政府自らが打開策をとるわけでもなく、「政府と経済界の緊密な疎通と協力が何より重要」と財界に協力を求めている。
韓国政府はファーウェイの一件でも、政府の対応方針を明らかにせず、民間企業の自主対応に委ねている。通常、こうした安全保障上の国際問題では、欧州諸国のように政府としての対応を明らかにするものだ。政府も民間企業からモノを調達しているので、政府自身の対応を明らかにせざるを得ないからだ。何より民間企業に対して国としての確固たる方針を示す責任がある。
しかし、韓国政府の方針ははっきりしない。ということは、従来どおりファーウェイを排除しないのだろう。
(後略)