記事(一部抜粋):2019年6月号掲載

経 済

ZOZO前澤社長を悩ます「株価」

「言ったもん勝ち」で高値売り抜けも資金繰り悪化で……

「三つ子の魂百まで」とは言うけれど、この人の「ビッグマウス」も一生涯、続くのだろうか。お年玉として1億円を庶民にばら撒き、大富豪を気取るZOZOの前澤友作社長(43)のツイッターは相変わらずである。
 5月20日には、東京スポーツ傘下の東スポWebが書いた「ZOZO前澤社長 所有絵画売却の次は『月旅行キャンセル』」という記事に噛みついた。
《「前澤、月旅行キャンセル」との報道。事実無根。何でも言ったもん書いたもん勝ちのこのメディア報道の現状、これで本当にいいの? どれだけの関係者が月旅行に想いを馳せ、努力と工夫を続けているか。自分以外の他者のことをもっと想像して書いて欲しい》
《東スポさんには記事見出しの訂正依頼をお願いしておきました(後略)》
 結果、タイトルを「ZOZO前澤社長 所有絵画売却で囁かれる“資金繰り”」に変えさせることに成功したのである。
 他の夕刊紙デスクが苦笑する。
「一体、何のコンプレックスなのかわからないですが、とにかく自分が批判されることには敏感で、大物としての懐の深さというか、余裕がないですよね。たかが東スポの観測記事にいちいち目くじらを立てるのであれば、派手なことをやって目立つのをやめればいいのに……。有名税という言葉も知らないんですかね」
 一方、「言ったもん勝ちという点では、前澤さんも同じではないか」と言うのは、さる経済誌の編集者である。
「言ったことがころころ変わるのは前澤さんの特徴でしてね。かつて絵画購入は投資目的ではないと明言していたのに、しれっとオークションに出して売り払ったのもその一例でしょう。また今年2月、彼がツイッターをやめると宣言したときもです。彼は『本業に集中します。チャレンジは続きます。必ず結果を出します』と書いた。ところが、4月25日にツイッターに復帰したと同時に発表されたZOZOの決算内容は、とても結果が出ているとはいえない悲惨な有様だったのです。なにより驚いたのは、ちょうど1年前の4月に前澤さん自身がぶち上げたZOZOの壮大な中期経営計画について、今年の決算説明会では一言も触れず、まるでそんな計画など存在しなかったかのように振る舞っていたこと。こんなことをやっておいて、東スポに『言ったもん勝ちで本当にいいの?』と難癖をつけるのは、どういう神経なのでしょうか」
 おそらく今年の決算説明会に出席した経済アナリストたち全員の頭にクエスチョンマークが浮かんだに違いない「幻の中期経営計画」について簡単に説明しておこう。昨年の決算説明会で、採寸仕様のZOZOスーツを着用して登壇した前澤社長は、誰もが驚く大風呂敷を広げたのだ。プライベートブランド(PB)をわずか3年で2000億円の売り上げスケールにすると宣言し、さらに、このPBの成功をテコにして、ZOZOを10年で時価総額5兆円、世界のアパレルトップ10に名を連ねる企業に成長させてみせると大見得を切ったのだ。
 ところが1年後に蓋を開けてみれば大幅な減益決算。PB事業は失敗に終わり、評価損を計上した結果、営業利益を押し下げる残念な結果となったのだ。
 経済誌編集者が続ける。
「今年も前澤社長は決算説明会に登壇しましたが、中期経営計画には一言も触れなかった。唯一、彼の前座を務めたナンバー2が、『3カ年の中計は当初の前提から大幅に変化をしてしまった関係で取り下げとしたいと考えています』とボソボソっと述べて、なかったことになったわけです」
 しかし、そんな言い訳ではとても済みそうにない話が一つ、持ち上がっているという。昨年5月下旬、前澤社長は自身の保有する600万株を市場外でZOZOに売却しているが、その株価に関する問題だ。別の経済ジャーナリストが説明する。
「前澤さんが株を売った日のZOZOの終値は3845円。この日に株の売買がおこなわれることは、その1カ月前の4月下旬に決まっていた。つまり、彼の気宇壮大な中期経営計画を発表したのと同じ時期だったのです。株価のチャートで確認すると、18年4月上旬に3000円前後だったZOZOの株価は、中計発表後にぐんぐん上昇を続け、5月下旬に3845円に至り、その後、7月下旬に4875円をつけた後、大幅な下げに転じます。そして色々あって現在は1800円。つまり、前澤さんは現在の株価より2000円も高くZOZO株を売り抜けたことになるわけです。ここで疑問なのは、結果として中身が何もなかった中計に、もしかしたらZOZOの株価を上昇させる効果だけはあったのではないかということです」
 精一杯努力したうえで結果を伴わなかったのであれば致し方ないが、万が一、中期経営計画の発表に株価対策の色気が少しでも含まれていたとすれば、前澤社長の持ち株売却には、彼が東スポに抗議した「言ったもん勝ち」の要素に加え、何らかの疑念を生じさせる余地が残るというわけである。
 さらに、ZOZOにとって巨額の含み損を抱えることになったこの自社株買いは、同社の財務体質に深刻なダメージを与えている。それまで無借金経営だったZOZOは、前澤社長から株を買い取るために240億円の借金を背負い、19年3月末の時点で、短期借入金が220億円も残っている。
 しかも、このところ毎月の資金流出が起こっており、ZOZOは運転資金でも忙しい状態に陥っているという。
(後略)

 

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