記事(一部抜粋):2019年5月号掲載

社会・文化

HIS会長が手を染めた怪しい取引

リクルート株の儲け話に飛びついたが……

 就職情報サイト『学情』によれば、2020年に大学を卒業する大学生の就職人気企業ランキングは、3位がJTBで5位が全日空だそうだ。旅行関連の大手企業が上位に名を連ねるのがこのところの傾向なのだが、その6位にランクインしたのは近畿日本ツーリストや日本航空ではなく、エイチ・アイ・エスだという。格安ツアーで知られる同社を率いるのは、ご存知、澤田秀雄会長兼社長(68)。かつて、孫正義氏やパソナの南部靖之社長とともに「ベンチャー三銃士」などと呼ばれた彼は、いまや学生から憧れの視線を向けられる超優良企業のオーナーとなったわけだ。しかし、そんな折も折、澤田会長が怪しいリクルート株の儲け話に乗っかって50億円を振り込んだ詐欺騒動が持ち上がった。
 社会部記者が説明する。
「澤田さんが資金の運用を任せていた人物のところに、リクルート株の話が持ち込まれたのは昨年の春頃でした。何でも江副浩正さんが財務省に預けていたまとまった単位のリクルート株があって、50億円というロットで購入するなら、市場価格より1割以上安く購入できるという話だったようです。単純計算すれば55億円分を50億円で購入できるわけで、これだけで5億円の儲けが出る。澤田さんは昨年5月1日に、グループ企業のハウステンボスから50億円を振り込んだものの、使途に不信感を抱いた銀行がストップをかけて、この取引は一旦は中止になりました」
 ここで話が終っていれば詐欺は未遂で済んだのだが、欲に目が眩んだのか、再び取引がおこなわれたという。しかし、50億円は何度か口座間を移動するうちに39億円がどこかへ消え、行方不明になってしまったのである。社会部記者が続ける。
「騙された側、つまり澤田会長の運用係は当然、必死になって取り返そうと昨年秋に民事訴訟を起こしました。それを『週刊報道サイト』というネットメディアがいち早く記事にしたため、新聞や雑誌の記者たちの知るところとなり、今年3月に開かれた初公判には多くの記者が詰めかけたのです」
 後始末をする羽目になった澤田会長はエイチ・アイ・エスの株式120万株を売却して53億円の資金をつくり、ハウステンボスに生じた穴を埋めたそうだが、酸いも甘いも噛み分けているはずの経営者として、こんな荒唐無稽な話に引っかかったのは赤面の至りに違いあるまい。
「実は、澤田会長がこの手の話に乗せられるのは初めてではないようです」と語るのは経済誌記者。
「澤田会長がエイチ・アイ・エスの便箋に自分の名刺を貼りつけ、署名捺印した『確約書』という文書がブローカーたちの間に出回ったことがあります。ここには『資金者殿 資金をお受け致します 宜しくお願い致します』と直筆で書かれていた。これは間違いなくM資金の一種と考えられる。つまり以前から、澤田さんはこの手の話の怪しいに引っかかりやすい人物だったことが窺えるのです」 
(中略)
「澤田会長の名刺や署名入りの文書はたぶん本物でしょう。実はM資金詐欺グループにとって、誰でも知っている一流経営者の本物のサインが入った名刺や申込書は、喉から手が出るほど貴重な小道具なのです。この小道具さえ手に入れば、そこらの中小企業のオーナーくらいなら簡単に騙すことができます。あなた以外にも一流経営者の方々がこのM資金に申し込んでいるんですよ、という何よりの証拠になりますからね。詐欺グループは、澤田さんクラスの経営者を相手にするときは、カネを騙し取ることよりも、まずは名刺や資金申込書に直筆で署名させることを第一の目的にするわけです」
 裏表の話になるが、詐欺グループが全く金を目的にせず、M資金の話を滔々と述べるからこそ、有名な経営者ですら大掛かりな詐欺であると見破れないわけだ。
 しかし、彼らの書き残した名刺のサインや資金申込書は、別の場所で何度も使われ、被害者を生んでいるのも事実。だからこそ2年前、M資金グループに申込書を渡してしまったローソンの玉塚元一社長は退任し、その責任を取ったのだ。
 翻って今回、澤田会長に経営者として一定の責任が問われるのは間違いなかろう。しかし、今のところ本人は辞任どころか説明責任を果たす気配すらないようだ。
(後略)

 

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