記事(一部抜粋):2019年5月号掲載

政 治

大阪W選、12区補選は維新で消費増税「延期」の可能性

【霞が関コンフィデンシャル】

(前略)
 大阪12区衆院補選で維新が勝ったことで、7月の参院選を消費増税では選挙が戦えないという声が高まり、安倍政権が消費増税を引っ込める可能性が指摘されている。
 これまで安倍首相は二度、消費増税を見送った。一度目は14年12月の衆院解散・総選挙で15年10月からの消費増税を世論に問うというものだった。二度目は16年5月で、伊勢志摩サミットで17年4月からの消費増税をリーマン・ショック級の影響があり得るとして見送った。いずれも増税予定時期の1年ほど前に決断しており、予算変更の影響がないように配慮したものだ。しかし、今回は消費増税を盛り込んだ予算を成立させているので、さすがに見送りはないとの意見が根強い。
 今年度予算の特徴は、消費増税対策の歳出が約2兆円も盛り込まれていることだ。中小の小売店でキャッシュレス決済へのポイント還元2798億円、低所得世帯等へのプレミアム付き商品券1723億円、住宅購入時の給付金等助成785億円、耐震・省エネ等建築・リフォームへのポイント付与1300億円、防災・減災のためのインフラ整備1兆3475億円などである。
 同時に、社会保障の充実に7000億円ほどの歳出がある。幼児保育の無償化3882億円、介護人材の処遇改善213億円、待機児童の解消163億円、年金生活者支援補給金1859億円、低所得高齢者の介護保険料の負担軽減327億円などだ。
 いうなれば、今年度予算は消費増税のための予算だ。その予算が成立したことは増税延期がしにくくなったことを意味する。実際、安倍首相は消費増税の腹を固めていると指摘する関係者もいる。
 たしかに安倍首相は「よほどのことがない限り、予算を崩すほうがリスクが大きい」と周囲に語っていた。もちろんリーマン・ショック級がない限りということだ。
 ということは、リーマン・ショック級という大義名分があれば、10月までに補正予算を出せばいいということでもある。その際、消費増税分の歳出と歳入を同額減額するのではなく、歳出は基本的に変えずに歳入で消費増税分を減額し、そのための財源を同額計上するほうが混乱ははるかに少ない。
 そのための財源探しは2兆円ほどだが、実はそれほど難しくない。しかも歳出を基本的に変えなければ、結果としてその補正予算は大きな経済対策になりうる。それで経済成長し、結果として税収も増えれば、次年度以降の予算編成も楽になるだろう。
 要するに、消費増税を吹っ飛ばす大義名分はリーマン・ショック級があるかどうかにかかっている。
 4月以降、各種の経済統計が発表になるが、それらの多くは芳しくない。そのうえ国会審議はスカスカだ。めぼしい法案もなく、児童虐待の防止策を強化する法案くらいである。憲法改正についても、憲法審査会の開催を一部野党が拒んでいる状況。統計問題も手続き面は別として実態問題としては大きくないので、盛り上がりを欠いている。
(後略)

 

※バックナンバーは1冊1,100円(税別)にてご注文承ります。 本サイトの他、オンライン書店Fujisan.co.jpからもご注文いただけます。
記事検索

【記事一覧へ】