一将功なりて万骨枯る──。絶えて久しく戦のない日本においては、直接的な教訓とする機会の少ない格言である。しかし、この春、もっとも厳しい決算を迎える上場企業となった「レオパレス21」やそのアパートを保有する多くのオーナーたちにとって、この言葉は今、苦い思いとともにかみ締められているはずだ。
というのも「レオパレス21」の株価を大暴落させ、存亡の危機にまで追い詰めたのは、事実上たった一人のオーナーの手腕だったからだ。5年前、「LPオーナー会」という任意団体を発足させた前田和彦氏(62)は、西では集団訴訟の指揮を取り、東ではテレビや新聞に告発し、南ではセミナーを開催し……、まさに八面六臂の大車輪でレオパレスにダメージを与え続けてきた。そして最近、「レオパレスはもうすぐ倒産する」と予言めいた発言まで始めたという。だが、過激化した彼の活動を目の当たりにするアパートオーナーの多くは「倒産させて一体、誰が得するのか」と今やドン引き状態。そもそもはオーナーとレオパレスの家賃交渉に手を貸す程度の“正義の味方”が、いつの間に、資本家打倒のために手段を選ばぬ革命家のように変質してしまったのである。
(中略)
「LPオーナー会は200人から300人の規模です。レオパレスには2万人以上のオーナーがいますから組織率は1%から2%くらい。前田さんは名古屋で建築関係のお仕事をされていた元サラリーマン。退職後にオーナー会をつくられたと聞いています。我々には腰が低くて人当たりの柔らかい方ですよ。でもレオパレス相手になると攻撃的に豹変して驚きます。といっても、大企業相手にあれだけ戦果をあげてきたのだから大したもの」
こう語る会員がいる一方、最近は批判的な声も少なくない。
「もとはレオパレスとオーナーたちの共存共栄を理念としていた団体だったはず。だから入会に当たってレオパレスの株を買うことも推奨されていたのです。国交省に建設業許可取消の行政処分を求めていると聞いたときは仰天しました。共存共栄といいながら、会社を潰すような動きをするなんて矛盾していますよ」
「気になるところといえば、共産党とタッグを組むケースが増えてきたこと。共産党の衆議院議員の宮本岳史さんと親しくしているし、前田さん本人が赤旗のひと欄で取り上げられたこともありました」
多くの会員が感じている共通の疑問は、決して安いとはいえない会費を徴収していながら、一切の会計報告を拒んでいることだそうだ。
「今どき、町のゲートボールサークルだって月300円の会費の会計報告をやっていますよ。ところがLPオーナー会はアパート1棟なら1万8000円、2棟以上なら3万6000円も取るのにそのお金が何に使われたか明らかにしません。一方で、前田さんご自身はアパートに太陽光発電の設置を引き受けたり、地震保険の勧誘も独自にやっています。レオパレスに対する会員の不信感をあおった反面、自分の商売になっている」
そしてついに昨年夏、レオパレスが倒産すると断言し始めたのだそうだ。
「驚いたのは、前田さんがすでにレオパレス倒産後の独自プランをつくっていて、その計画を滔々と述べたことでした。彼はレオパレスが倒産した後にアパートのサブリース契約を引き継いでくれる無名の会社を見つけ、その会社と協議のうえ、会員たちに推薦していたのです。要するに彼の最終目的は、自分の息が掛かった企業に3万棟のアパートを管理させるという乗っ取りのようなストーリだったわけです」
(後略)