政府はこのほど、来年の東京五輪パラリンピック後に見直す予定だったサイバーセキュリティ対策を前倒しし、今春にも安全基準の指針を改定する検討に入った。巧妙化するサーバーテロや度重なるシステム障害に危機感を募らせたもので、14分野の重要インフラを官民一体となって強化する。具体的には情報通信、金融、航空、空港、鉄道、電力、ガス、行政、医療、水道、物流、科学、クレジット、石油で、いずれも国民生活や経済活動に密着する分野だ。4月に設置される「サイバーセキュリティ協議会」には政府機関やインフラ業者、大学などを招集し、最新のサーバーテロ情報などを集めて対策を練るという。
しかし5月の天皇代替わり、6月のG20サミット、9月のラグビーW杯、そして来年の東京五輪パラリンピックと続く重要行事の「大警備」を一線で担う警察警備当局のサイバー対策がなんとも心許ないのだという。警察に詳しいジャーナリストがこう言う。
「警備担当の幹部が『警察では無理。北朝鮮や中国と戦えない。自衛隊でやってほしい』と完全にお手上げ状態なのです」
警察でこれまでサイバー犯罪を担当してきたのは刑事局。しかし長年、単にハッカーなどのコンピュータ犯罪のレベルでしか捉えてこなかったため、そのツケが今になって回ってきているという。
「国民生活を守る安全保障の観点はなかったに等しい。10年以上前から『サイバー局』の創設を提言する声があり、5年ほど前にようやくその動きが出たが、スクラップ&ビルド、つまり代わりにどの局を潰すかがなかなか決まらないまま、結局は先送りになってしまった」(同)
2014年に成立したサイバーセキュリティ基本法を根拠に、内閣にサイバーセキュリティ本部が、内閣官房に内閣セキュリティセンター(NISC)が設置されたが、「遅きに失したといわざるを得ない」(同)。
世界のサイバー空間の戦いは熾烈で、欧米では軍が主導している。ようやく日本でも、昨年12月18日に閣議決定された「防衛大綱」でサイバー空間の安全保障の重要性が次のように謳われた。
(中略)
中国や北朝鮮のサイバー攻撃力に相当な危機感を持っていることがわかるが、先のジャーナリストは「防衛大綱は作文にすぎない。結局、何もできないのではないか。サイバーの領域で日本は大きく後れをとっており、中国や北朝鮮とはプロとアマチュアほどの開きがある」と手厳しい。
(後略)