平成最後の正月からほぼ1カ月。日本を最も騒がせたのはこの人物をおいてほかには見当たるまい。政治家でも芸能人でもなく、一代で財を成した成金のIT洋服屋、東証1部上場のZOZOを率いる前澤友作社長(43)である。
自分のポケットマネーから1億円を取り出し、100万円を100人に配るという「お年玉企画」が大騒動となり、ツイッターのリツイート数が世界一になったニュースを目にした方も少なくないはずだ。もちろん、ばら撒いた札束に我も我もと大衆が群がるのを見て喜ぶようなやり口には肯定的な意見ばかりではなかった。有名人たちの反応を見ても、例えば、松本人志は「お金で遊ぶなとしつけを受けてきた」とチクリ。ビートたけしも「品がない」と切り捨てている。しかしその賛否はともかく、1億円を広告料と仮定すれば、耳目を集める仕掛けとして採算が合っているとも評価できたのである。
「本人はうまく話題づくりができたと手応えを感じていたはずです」
そう解説するのは、経済誌のベテラン記者。
「昨年から、フォロワー数を増やしたいと言っていて、これまで50万人程度だったフォロワーが一気に500万人に増加した。彼が直接、言葉を届けられる若者が10倍になったわけですから、1億円の価値はあったと考えるべきでしょう」
正月早々、目論見が大当たりし、前澤社長は有頂天になったに違いないが、その一方で、本業のほうはといえば、皮肉なことに雲行きが少々、怪しくなってきた。ゾゾタウンが独自に企画した安売りサービスに反発して、これまで出品してきた有力ブランドが、次々と離反を始めているのだという。
ベテラン記者が続ける。
「まず五大陸や23区といったブランドを擁するオンワード樫山が全ての服の出品を取りやめることになりました。次にヨンドシーやミキハウスといったところが続き、さらにもう少し規模の小さいブランドが追随している状況です」
それぞれのブランドが撤退を決めた理由としてあげるのは、ゾゾタウンの自分勝手なディスカウントセールである。
「去年のクリスマスからゾゾタウンは『ZOZOARIGATOメンバーシップ』と名づけた有料の会員サービスを開始しました。これは月額500円、あるいは1年で3000円の会費を払えば、ゾゾタウンでの買い物が常時10%引きになるというものです。この割引分については、全てゾゾタウン側が負担し、ブランド側には一切、経済的負担はかかりません。そんな理由もあって、ゾゾタウンはかなり強引にこの話を進め、それぞれのブランドに通知したのはサービス開始まであまり時間的余裕のない時期だったそうです。しかし、ブランド側からすれば、たとえ経済的負担がなくても、恒常的に割引セールがおこなわれることはイメージに関わる大問題。その辺を理解せずに話を進めたゾゾタウンに不信感が募り、複数のブランドの出品取りやめに結びついたのです」(同)
ネットで売れた服の手数料が収益の柱だけに、前澤社長にとっても由々しき事態だが、頭を痛めているのは、有力ブランドの離反だけではない。予想を下回る業績と、それに伴う株価の急落も手をこまねいているわけにいかない喫緊の課題だ。実は、前澤社長がツイッターの派手な言動で物議をかもしている一方、ZOZOの今期の業績はかなり深刻なものになりそうなのだという。
兜町業界紙の記者が言う。
「2018年10月末に公表された第2四半期の決算では、売上高は537億円と対前年の第2四半期を上回ったものの、営業利益や経常利益は前年に比べて27%も下回り、100億円ギリギリでした。ZOZOが予想している19年3月期の売上高1470億円、営業利益400億円はほぼ絶望というレベルです。しかし、強気な前澤さんは業績予想を改めることなく、『ZOZOARIGATOメンバーシップ』で売り上げを伸ばし、帳尻をあわせようと無理をしたのではないでしょうか」
ところが、それが裏目に出てブランドの集団離脱が始まってしまった以上、近い将来、ZOZOは業績の下方修正を迫られることになるのだという。
(後略)