絶対的権力を謳歌してきた安倍政権ではあるが、最近、さすがに綻びが目立ってきた。
「得意」の外交では、日米連携ならぬ「対米従属」が明白になってきたし、「安倍政権で解決する」はずの北方領土返還も拉致被害者の救済も一歩も前進していない。「アベノミクス」も、景気は一向に好転せず、労働者の可処分所得は減ってしまい、国家財政の破綻は取繕いようもない状態である。加えてモリ・カケ問題の発覚で、権力の私物化が公知の事実になってしまった。権力者と親しい者は法に違反しても司直の手にかからないし、公金の配分に与ることができる。こんな世の中になってしまった。
だから、国民は明らかに安倍政治に倦んでいる。
ところが、与党の支持者か野党の支持者かにかかわらず、知人と話し合っても、半ば諦め顔で、「それでも安倍さんに代わる人がいない」などと言う。
しかしそうだろうか?
私は、安倍首相に代わり得る人材は与野党にいくらでもいる……と思う。
まず与党であるが、石破茂代議士や岸田文雄代議士のいずれが首相になっても、安倍首相よりはましである。まず、国語力と一般教養に不安がある安倍首相より、この二人は明らかに個人として優秀である。加えて、スタンドプレーと側近重用を好む安倍首相と比べて、この二人は伝統的な自民党の手法を尊重してきた実績がある。つまり、党内で議論を尽くし、役人の知恵を活用する……旧来の自民党政権の手法である。この伝統を壊した安倍政治が悲惨な現状を招いたことは明白である。人材集団である党内で議論を積み上げることをせず、首相と茶坊主のような側近の考えを公認権を盾に党内に押し付け、官僚に対しては人事権を振り翳して「嘘をついてでもこの方針を通せ」と静かに恫喝する。これで、日本国の優れた統治制度は、まるで江戸時代劇の「お代官様と越後屋」のようなものに堕してしまった。
翻って、野党にも人材はいる。まず、小沢一郎代議士は、国会内最長老として、政界の生き字引のような経験の蓄積を持っている。これを活用すれば、老獪な自民党と強力な官僚機構に騙されることはない。また、岡田克也代議士や江田憲司代議士は、官僚出身で自民党中枢にいた経験もあり、何よりも自分なりに筋を通してきた人物で信用できる。さらに、志位和夫代議士は、文字通り頭脳明晰な好人物で、権力を託するに足る人物である。このような人材が心を開いてチームを作れば立派な政権ができるはずである。
問題は、旧民進党の幹部で今は小さな野党の幹部の地位を占めている人々である。彼らは、自らの能力の限界を自覚していないのか(あるいは自覚しているからなのか?)、上述のような野党側の貴重な人材を活用しようとしない姿勢で一貫している。つまり、彼らは、いつも自分が中心でいることに腐心しているようで、自分より大きな能力のある人々に教えを請う姿勢がない。それではあの強大な自公政権に取って代われるはずはない。
だから、野党は、いつまで経ってもそれぞれ小さく纏まって複数に分裂している。そして、一人区の候補者の一本化もできず、常に「自党優位」の欲のぶつかり合いに終始し、結局、野党が自公独裁政権の継続に手を貸している。
バカバカしい。