記事(一部抜粋):2018年12月号掲載

連 載

【狙われるシルバー世代】山岡俊介

巧妙・悪質化する仮想通貨詐欺 ネットと無縁の高齢者も餌食に

 仮想通貨を悪用した犯罪が多発している。
 仮想通貨はネット上でやりとりされることが多いことから、その被害者はこれまでネットを利用する主婦や若者が多かった。
 ところが、そのやり口が変化、巧みになるなか、これまでネットとも仮想通貨とも無縁だった高齢者までもが被害に遭うケースが増えている。
 その典型例が「ワールドフレンドシップコイン」(WFC)というクズ仮想通貨だ。
 警視庁をはじめとする警察当局は、いま「テキシアジャパンホールディングス」(千葉県千葉市)という投資詐欺を疑われる会社の摘発に乗り出そうとしている。
 警視庁詰め記者が解説する。
「テキシアは2013年9月に設立され、東南アジアへ進出する個人、法人を支援すると称して資金を募り、1口100万円(投資ではなく貸付の形をとる)で月3万円の高配当を約束。高齢者を中心に実に500億円を集めたともいわれます。しかし、事業の実態はほとんどなく、すでに配当はストップ。『被害者の会』が結成されています」
 実は、このテキシアが詐欺で摘発されるのを免れようと考え出したのが仮想通貨WFCなのだ。
「借金を現金ではなく仮想通貨のWFCで返済するというのです。しかし、そもそもが詐欺であることをごまかすためにつくり出した仮想通貨。今年7月にICO(イニシャル・コイン・オファリング=仮想通貨を使った資金調達)を完了し、8月に海外の交換所に上場したものの、実際には売買ができず無価値と見られています。にもかかわらず、ダイヤモンドとの交換が可能なので価値があり、上場したら価格が何倍にもなると煽い、ICOで最大300億円集めると謳っていました」(同)
 仮想通貨に疎い高齢者のなかには、こうした謳い文句につられ、貸し付けたカネを仮想通貨で返済してもらうことに同意した者がかなりいると見られている。
「同意して仮想通貨を受け取れば、それは投資家(高齢者)の自己責任。一般の仮想通貨同様、上場で大儲けできると期待して投資したもののうまくいかなかったという理屈になりますからね」(同) 
 ところで、11月14日、警視庁生活経済課は、米国の投資会社「SENER」に投資すれば最大月20%の配当が得られると謳い約83億円の資金を集めたとして、金融商品取引法違反(無登録営業)の疑いで会社役員・柴田千成容疑者ら8人を逮捕した。
 このSENERと柴田容疑者のいかがわしさについて筆者はすでに本連載154回目(17年8月号)で取り上げている。
 SENERへ投資した者の大半は、仮想通貨の代表格である「ビットコイン」での決済を勧められていた。ビットコインはネット上で瞬時に決済できるのでお手軽であることに加え、通常の海外送金と違い証拠書類が残らないので犯罪の足がつきにくい。さらには仮想通貨は金銭ではないので金融商品取引法違反(無登録営業)に問われないと思っていたようだ。
 こちらの被害者のなかにも高齢者が多く含まれている。海外のダミー企業に送金させることから手続き書類は英語記載になっていたが、ネットや英語が不得手の高齢者が被害に遭ったのは、柴田容疑者のように手続きを代行する者がいたからだ。
(後略)

 

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