B 今年2月の「チャイナ・ショック」に続いて、また世界的に株価が乱高下を始めた。
C 今回の動きには特徴があって、日経平均株価は3月26日の安値2万0347円を下回っていないけど、東証マザーズ指数はそれからもずっと下がり続けて、ほとんど戻しらしい戻しがないままだ。
A たしかに、日経平均は10月1日に2万4448円と高値を更新したけど、全銘柄を表すTOPIXはもう少しで3月26日の安値を割り込みそうだ。これは、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)と日銀が主要銘柄買いとETF買いで支えているからで、全体はすでに下げ相場になっているということ。今回の下げでは「ジョージ・ソロスが空売りを仕掛けた」とも言われているけど、本当かどうかはわからない。
B ソロスはトランプが大統領になった時も空売りを仕掛けて、数週間で約1140億円の損出を出したと言われている。今回もまた大損するんじゃないの?
C ソロスは「イングランド銀行を潰した男」と言われているけど、その片腕として1992年の英ポンド売りを主導したことで知られるスタンリー・ドラッケンミラーは、逆にトランプ当選後の株価上昇を見込んで利益を得た。そのドラッケンミラーが10月11日、自身のポートフォリオで25%ほど空売りのほうが多くなっていることを公表したくらいだから注意が必要だと思う。
A ソロスは根強い「反トランプ」論者だから、中間選挙に向けてトランプの足を引っ張る目的で株価下落を演出した可能性はあると思う。トランプはトランプでヒラリーの熱烈な支持者であるソロスを警戒していて、10月5日にはこうツイートしていた。「エレベーターの前で騒いでいた無礼な連中は、議員をイメージダウンさせるため金を受け取っているプロ活動家だ。あんなのに騙されるな。それに全員、プロ活動家に特有の特徴がありありだ。ジョージ・ソロスか他の誰かに金を貰ったのだ。人類愛からやってる者の特徴ではない」。
B トランプは連邦準備理事会(FRB)まで批判していた。「FRBのせいで高い金利を払っている。相次ぐ利上げという大きな過ちを犯しており、これほどまでに積極的でないことを望む」と。
A リーマン・ショックの前より数倍もの量的緩和(QE)をやってバブルをつくった後で、そのQEと同じ勢いで金融を引き締めしめれば、株式市場がクラッシュするのは火を見るより明らかだ。ドラッケンミラーも「バブル崩壊は新興国市場から始まって、徐々に先進国へと波及し、最後は米国株が急落となる」と言っている。
C 現在の状況がまさにそれで、新興国の代表である中国の株式、不動産、人民元が最初に急落し、その動きがトルコ、アルゼンチンへと波及、そして欧州と日本の新興株が売られている。
B 中間選挙前だけに、政治的要因が大きいんだと思うけど、これは前号の「昭和恐慌」の話とも重なってくる。引っ掛かるのは三菱総合研究所(三菱総研)元顧問の高橋乗宣が9月21日付『日刊ゲンダイ』の「一歩先の真相」というコラムで、「リーマン・ショックから10年。世界経済を崩壊の淵まで追い込んだ金融危機が、今度は日本発で起こりそうな予感がする」と書き、「安倍3選で日本経済はとてつもない事態(日本版リーマン・ショック)を迎えることになるだろう」と指摘していたこと。
C 僕も読んだけど、安倍首相の責任に言及するかなり厳しい内容だった。
B 実は90年の日本のバブル崩壊の1年前に、証券業界が三菱総研の会長だった牧野昇を講師に招いて講演会をやった時のこと。話の途中で牧野が、こう言ってバブル崩壊を予言したんだ。「私の知人が千葉県で町工場をやっていまして、利益を出すのがやっとで30〜40年ほど事業を続けていたある日、工場の横にあったぺんぺん草が生えていた土地を数坪売ったところ、汗水たらして長年働いた利益より多かったというんですね。汗水たらす努力はぺんぺん草の土地に勝てないのかと。これって皆さんおかしいと思いませんか? 是正されなきゃおかしいでしょう?」。
A 証券業界の講演会で講師がバブル崩壊を予言するなんて、まるでパロディーだけど、正直な人なんだろうな、きっと。結果として予言は的中したわけだし。
(後略)