この連載の165回目(2018年7月号)で、安倍晋三首相の選挙妨害疑惑を取り上げた。
お陰さまで反響があり、山本太郎参議院議員が7月17日、カジノ法案を審議していた参院内閣委員会でこの疑惑を取り上げ、「安倍事務所側は暴力団に繋がりのあるような人物に選挙妨害を依頼していたのだから、カジノ自体を止めるか、総理が辞めるか、どちらか決めていただかなければ話が進まない」などと安倍首相を追及した。
さらに、大手マスコミはいまだ沈黙しているものの、情報はツイッターなどで拡散、「♯ケチって火炎瓶」などの言葉が生まれ、“炎上”に近い状態にまでなり、かなりの人が安倍首相の疑惑を認知する状況になっている。
しかし同時に、筆者を困惑させるような事態も起きている。
疑惑情報が拡散し、その影響力を無視できなくなった親安倍派がツイッターで反撃を始めたのだが、反安倍派のツイッターの内容自体に多くの事実誤認があり、親安倍派が容易に反撃できる事態になっているからだ。事実誤認があるのは、前出・山本議員も例外ではないのだが、それに触れる前に、前回の記事をご覧になっていない読者のために、この疑惑について簡単に説明しておこう。
1999年におこなわれた下関市長選挙で、安倍首相(当時は2回生議員)が推す江島潔氏(現・参議院議員)を当選させるため、有力対抗馬だった古賀敬章氏を誹謗中傷する文書などを撒くことを、暴力団にも通じる小山佐市なる人物に安倍事務所側が依頼。小山氏は古賀氏の女性スキャンダルを書いた週刊誌の記事のコピーや、「古賀氏は朝鮮人!」などと虚偽の内容を書いたビラを市内全域に大量に配布した。その効果がどの程度あったか定かでないが、結果、古賀氏は落選し、安倍首相が推す江島氏が再選を果たした。
しかし、安倍首相が「見返り」を約束していたにもかかわらず、それを実行しなかったことから、小山氏は特定危険指定暴力団「工藤会」(本部・福岡県北九州市)系の組長らと翌2000年、安倍首相の地元・下関市の安倍事務所や自宅に火炎瓶を投げ込んだ。
その後、小山氏は非現住建造物等放火未遂容疑で逮捕され、懲役13年の判決を受けて服役、今年2月に満期出所した。5月になって、以前からこの件を取材していた筆者に連絡をくれ、「選挙妨害を頼まれたのは事実で、妨害工作をした後、安倍首相本人に直接会い、約2時間にわたって見返りについて話し合った」と証言。さらに、それを裏付ける証拠の3枚の文書も筆者は入手した。
現内閣総理大臣の事務所(証拠文書には当時の地元筆頭秘書の署名・捺印あり)が、民主主義の根幹を揺るがす卑劣な犯罪に手を染めていた─それがもし事実なら、選挙妨害自体はすでに時効とはいえ、安倍首相は即、総理を辞め、国会議員の職も辞すべきだろう。
(後略)