大塚家具の凋落傾向に全く歯止めが掛からない。大株主を巻き込み、プロキシーファイト(委任状争奪戦)という壮大な親子喧嘩をやったのが2015年春。見事勝者となって、会社を手中に収めた大塚久美子社長(50)の目算がことごとく外れて3年余──。酷暑の続く8月に明らかになったのは、業績が悪化の一途を辿り、およそ浮上の兆しが見えないことと、長年のパートナーだった大株主の外資ファンドに見限られていたことだった。
おかげで株価は上場来安値を探る展開で低迷し、彼女の経営手腕そのものに極めて深刻な疑問符が突きつけられている。孤軍奮闘してきた強気の「かぐや姫」が崖っぷちに追い込まれているのだ。
大塚家具が直面した「禍いの8月」について経済誌記者が解説する。
「8月上旬は、大塚家具が業務提携を打診する企業に関しての新聞報道が続き、大塚家具側がそれをいちいちホームページで否定するといういたちごっこが繰り広げられていました。『本日の報道について』というニュースリリースが11日までに5本も出たんですから異常事態でしょう。しかし、われわれが衝撃を受けたのは、14日に発表された6月30日までの決算短信でした。大塚家具は12月決算の会社なので、18年の半年分の決算ということになりますが、この数字が極めて悪かった。しかも通期の業績予想を若干の黒字予想からいきなり大幅な赤字に下方修正しているのです」
数字を少し具体的に見ていくと、これまで2億円の黒字を予想していた18年通期の営業利益の予想をいきなり51億円のマイナスに変更したのである。総売上げが400億円足らずの企業が営業利益を53億円も下方修正することは通常はありえまい。
経済誌記者が続ける。
「半期の決算の中身も大問題です。現金や預金、受取手形、売掛金といった当座資産と流動負債のバランスが悪化していました。流動負債とは、1年以内に支払わなくてはならない借金で、その合計が71億円。一方、すぐに換金できる手元資金という意味合いの当座資産はたった40億円しかない。当座資産を流動負債で割ったのが当座比率で、上場企業の場合、この数字が80%を下回ると要注意と見られます。実は大塚家具の場合、17年年末の決算で、当座比率は66%しかなかった。しかし、それがさらに低下し、今回の半期の決算で計算すると56%まで下がっている」
しかも、大塚家具は今年の春、所有不動産を売却しており、26億円の固定資産が帳簿から消え、11億円以上の売却益も計上している。そのうえで当座比率が悪化しているのだから、いよいよ財務上の体力を失ってきたと見るべきで、これまで無理やり続けてきた配当も無配に転落する公算が高いという。
(中略)
いずれにせよ、久美子社長の描いていた経営計画の青写真は今のところ、ことごとく失敗しているのだが、惨状の何もかもを彼女のせいにするわけにもいくまい。あの委任状争奪戦の時には61%の株主が彼女の経営計画に賛意を示していたからだ。
先の経済誌記者がいう。
「最近、日本でも時々、話題になる議決権行使助言会社というのがあります。機関投資家の代わりに議案を分析し、提言することが業務で、あのプロキシーファイトの時にも口を挟み、久美子社長側に立ちました。例えば、大手のグラスルイス社は、『(久美子社長の作った)中期経営計画は、十分な根拠を有し、現在のビジネスモデルの弱点に的確に対処し、国内家具市場の変化に対応できるように構築されたものである。大塚久美子社長に経営者としての実績に懸念を発見することは出来ない』と表明しました。これが決め手の一つとなり、久美子社長に軍配が上がったのです」
しかし、無責任な助言会社が不明を恥じたところで、客足が戻ることはない。
(後略)