記事(一部抜粋):2018年9月号掲載

社会・文化

翁長氏急逝で混沌、カジノ誘致合戦

【情報源】

 カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法がようやく成立、全国で3カ所の誘致をめぐる自治体の熾烈な争奪戦が佳境に入ってきた。カジノ解禁についてはいまだに賛否が渦巻いているが、そもそも世界各地、北朝鮮にさえある飽和状態のカジノが成長戦略の目玉になるはずもなく、すでに世界最悪水準にあるギャンブル依存症や治安が急速に悪化するはずがない。あくまで、地元自治体活性化のひとつの起爆剤程度のものと捉えるべきだろう。
 カジノ設置の有力候補は大阪、北海道、九州あたりだが、一方で集客力やカジノ業者の意向から「大都市2枠、地方1枠」との見方もある。そのなかで大阪の人工島「夢洲」はほぼ決まり。苫小牧市や釧路市、留寿都村が名乗りを上げている北海道では「立地条件や米国のカジノ業者と連携している苫小牧市が先行している」(カジノ議連関係者)という。
 水面下で大穴候補として再浮上していた沖縄だが、8月初旬に翁長雄志沖縄県知事が急逝したことで微妙な情勢になってきた。翁長知事によって一旦は誘致から撤退に転じた沖縄は「普天間基地の辺野古移設を進めるためにも、今年11月の沖縄知事選で勝ちたい政府与党がカジノを経済振興のカードにする」(与党幹部)との政治的な思惑から一躍、有力候補に。ところが、翁長氏の死去によって知事選は9月下旬に前倒しされ、“弔い合戦”として辺野古反対派が勢いづくなど政府は選挙戦略そのものの見直しを迫られることになり、カジノどころではなくなるかもしれない。
 安倍晋三政権を支える二階俊博自民党幹事長のお膝元である和歌山。7月末の和歌山市長選でカジノ賛成派の尾花正啓氏が再選されたことで、二階幹事長の剛腕と根回しによる「和歌山マリーナシティ」への誘致が加速する可能性もあり、一部では隣接する大阪・夢洲との連合構想も取り沙汰されている。
 ほかにも、公明党が推す「ハウステンボス」の長崎や、安倍人脈の里見治氏率いるセガサミーホールディングスが買収した「シーガイア」の宮崎、こちらも安倍応援団のフジテレビが主導、経済効果が大きい「東京・お台場」、地元の反対でトーンダウンした菅義偉官房長官の選挙区である「横浜・山下埠頭」の巻き返しも予想され、沖縄の行方も含めてカジノ誘致の最終決着までには、まだかなりの紆余曲折がありそうだ。
(後略)

 

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