記事(一部抜粋):2018年8月号掲載

社会・文化

サブリース業界を徘徊する“妖怪”

レオパレス21「オーナー会」の独善

「ヨーロッパを妖怪が徘徊している。共産主義という名の妖怪が」
 カール・マルクスがこの有名な一節を冒頭に記した『共産党宣言』を出版したのは1848年のことである。それからちょうど170年を経て、目下、日本の不動産サブリース業界を「LPオーナー会」という名の怪しい妖怪が徘徊している。
 もともとこの団体は、業界2番手に位置するレオパレス21とオーナーの家賃保証交渉に助言する助っ人のような組織だったが、発足4年で年々過激化していき、共産党代議士と一緒にロビー活動をしたり、集団訴訟を起こしたり……。一見すると弱い立場のアパートオーナーを救う白馬の騎士ではあるものの、最近のあまりに独善的な活動に眉をひそめるオーナーもいるという。実はレオパレス21の株価まで暴落させてしまったからだ。
 兜町の証券関係者が説明する。
「レオパレスの株価は5月半ばに1000円をつけたのをピークに、滝下りのような右肩下がりのチャートを描き、今は4割減の600円前後に低迷しています。実は、直近の決算では業績も上がっていて、特に悪い材料はなかった。それなのに、ここまで下げてきたのは、LPオーナー会が掘り起こしたアパートの施工不良の問題がダイレクトに影響しているからにほかなりません」
 施工不良問題とは、レオパレス21が1995年〜2008年にかけて建設したアパートの一部に、「界壁」と呼ばれる屋根裏の間仕切りが設置されていないケースが見つかったこと。界壁には遮音や防火の目的があり、5月下旬、テレビ東京が『ガイアの夜明け』で、違法建築の疑惑として大々的に放送した。この番組づくりに深く関与したのがLPオーナー会だったという。
「LPオーナー会の協力のもとに制作したことは事実。協力がなければ屋根裏を勝手に撮影したりできませんからね。局としては、建築基準法違反の疑いを問題提起できたのはよかったけれど、一方で、レオパレス21と裁判で争っているオーナー会に全面的に依拠した番組づくりには、少し違和感が残ります。報道としてバランスが悪いのではないかという意見もあったのです……」(テレビ東京の関係者)
 確かにあるべき界壁がない状態は建築基準法に違反する可能性が高く、レオパレス21にはこの点で弁解の余地はあるまい。しかし、レオパレス側に同情する声もないわけではない。所管する国交省の担当記者がいう。
「一言で建築基準法違反といえば、耐震偽装の姉歯事件を思い出す人が多いはずですが、今回の界壁の不備は、例えば地震の際、建物が壊れるといった深刻な強度の問題ではないのです。もちろん間仕切りとして界壁があると遮音性は高くなるし、防火の観点でも火が出た場合、炎が天井裏を回って隣の部屋に延焼するのを防ぐことができる。しかし、部屋の天井の耐火性能がある程度高い場合は、必ずしも界壁が必要とまでは言えないケースもありましてね。実際、今年の建築基準法改正では、界壁の基準が緩和され、遮音性の優れた天井であれば、必ずしも界壁が天井裏にまで達しなくても良いとされています。また、レオパレス21に取材をすると、建設費を下げるための手抜き工事や工期短縮が目的の設置不良ではなかったことがわかる。現場の大工さんに渡される施工マニュアルに不備があったため、界壁の材料が建設現場まで届いていたにも拘らず、大工さんがそれぞれの解釈で設置したり、設置しなかったりという状態にあったわけです」
 要するに致命的な欠陥ではないものの、それでもレオパレス側は、膨大な数の対象物件の調査と必要な補修工事を行うことを表明し、現段階で10億円以上の出費が予想されている。2018年3月期の経常利益が223億円だったレオパレスにとって、この損失は特に大きい数字とは言えないが、今後、補修費が拡大する懸念が残り、株価を押し下げているわけだ。
 これに頭を抱えるのは、オーナー会とは無関係の立場にあるアパートオーナーたちだという。あるオーナーが嘆く。
「持っているレオパレスの株が下がったのは我慢するにしても、今のLPオーナー会の活動は間違いなく、レオパレス21が建てたアパート全体のイメージダウンにつながっています。こんなことが続けば、入居率に影響しないはずがない。そもそもこの会は、オーナー間の情報交換をおこない、相互に助けあうことが目的という触れ込みだったのに、いつの間にか、重箱の隅をつつくようにレオパレス21を攻撃する団体に変わってしまった……。一体、何をやりたいのか、わかりません」
 確かに、LPオーナー会のホームページを拝見すると、弁護士や司法書士、税理士をずらりと揃え、レオパレス21との集団訴訟に取り組み、違法建築被害者の会を結成し、レオパレス21の建設業許可取消の嘆願までしている。
(後略)

 

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