6月18日、週始めの月曜の朝、大阪北部を震源とする震度6弱の地震が発生した。都市直下型ということもあり、広範囲で人的物的な被害が出た。大阪府内で震度6以上を記録したのは1923年に現在の形で観測を開始してから初めてのことだという。
地震による被害といえば、2011年3月11日に発生した東日本大震災がすぐに思い浮かぶが、それ以降も、日本は何度も大災害に見舞われてきた。しかし、被災地の復興に向けた政府の予算対応は適切だったとは言い難い。今回大阪の地震、また今後予想される大地震で、財務省にはどのような対応が求められるのか。
実は今後の財務省の対応については、ある程度見通すことができる。というのは、東日本大震災の後に実際起きたことが再び繰り返されると予想されるからだ。
当時は民主党政権だったが、異様に素早い対応があった。それは復興増税である。被害の全容がまだ定まらない段階で、当時の菅直人首相が谷垣禎一自民党総裁と会談し、復興増税の方針を決めたという。当然、この素早い行動の裏には財務省の官僚がいたはずだ。
そして被害の全容が明らかになりつつあった4月14日に1回目の東日本大震災復興構想会議(議長は五百籏頭真・前防衛大学校長)が開かれ、冒頭の議長挨拶で復興増税への言及があった。この会議の事務局を仕切っていたのは財務官僚で、彼らのシナリオ通りに復興増税案が盛り込まれた。
復興増税による復興計画。このストーリーは、日本のほとんどの経済学者の支持を得た。ちなみに、ネット上では復興増税の賛成者リスト(http://www3.grips.ac.jp/~t-ito/j_fukkou2011_list.htm)を見つけることができるが、そこには多くの著名な経済学者が名を連ねている。
しかし、大災害の直後に増税をしたなどという話は、古今東西、聞いたことがない。
復興増税は、経済学部大学院程度でならう課税平準化理論に照らしても明らかに間違っている。つまり、一時的な経済ショックがあって財政出動した場合、増税によってその時点の財政収支を均衡させることは効率性の観点からも望ましくないということだ。むしろ公債発行によって税収と財政支出を一時的に乖離させたほうがいい。100年に一度のショックがあってそのために財政支出が必要だというなら、「100年国債」を発行して負担を100年間で分散したほうがいいという理屈だ。
要するに、大災害時の復興財源は、増税ではなく国債によってまかなうというのが経済学のセオリーなのだ。このセオリーを無視したため、日本は、東日本大震災による被害と、増税による経済低迷というダブルパンチを受けてしまった。
情けないことに、日本の経済学者は増税指向の者が多く、そのほとんどが財務省のポチと化している。それゆえ「大災害には国債発行で対処」という教科書レベルの議論を無視し、財務省に媚びて教科書にない増税を主張した。
財務省に魂を売った経済学者たちは、大学ではまともなことを教えられず、世界からも取り残されている。日本の経済学界の体たらくを示しており、ノーベル経済学賞を日本人が受賞できないのも当然である。
自然災害は避けることができない。しかし、その被害を最小化するための対策はもちろん可能だ。そして、そのための予算は、復興増税ではなく国債発行によって賄うべきなのだ。
(後略)