記事(一部抜粋):2018年6月号掲載

社会・文化

君臨20年経産省天下り理事長

優良財団「化学物質評価研究機構」を私物化

 経済産業省技官OBらによる一般財団法人・化学物質評価研究機構(本部・文京区、化評研)のクーデター騒動を、本誌は2016年8月号「経産省天下り先でクーデター未遂」で報じた。年収3000万円の好待遇をめぐる経産省技官OB同士の暗闘──。理事在任20年という記録を更新中の理事長・細川幹夫(1971年入省)に対して、元大臣官房審議官・照井恵光(78年入省)が仕掛けたクーデターで、照井に担がれたのは化評研へ82年に入ったプロパー理事の工学博士・大武義人だった。しかし化評研は当時、騒動の有無を語らず二人の理事選任のみを示した。当事者が皆口を噤んでしまい、実態は杳としたままだった。
 あれから2年、火種は燻り続けていた。ここへきて“癌ハラスメント”や欠陥工事業者へ補償を求めない背任疑惑等が発覚し、「緊急動議」の採決がなされないままであることも判明した。
(中略)
 今年3月中旬に長らく音信不通だった取材先から連絡があった。筆者が20年ほど前、「通産省技官OBとゼネコン・フジタによる地熱発電事業の破綻」を追っていた時に知り合った霞が関周辺関係者。待ち合わせ場所の都内ホテルロビーに現れると、挨拶もそこそこに細長い茶封筒を差し出し、「出所はしっかりしている。怪文書ではない。好きに使ってくれていい」と言い残し、周囲に目を走らせながら立ち去った。
 茶封筒にはA4判3枚に箇条書きされたレポートとSDカード、そして研究施設の外観写真がプリントされた未使用の図書カードが入っていた。
 レポートには、①緊急動議や評議会の様子、②クーデター騒動の直後に理事長の細川が専務理事の大武に「君は幸い癌になったから、それを理由に専務理事を辞める辞表を書け。書かなければ非常勤理事にする」と何度も迫ったこと、③前田建設工業の施工に工事ミスが発覚し522万円以上の損害が出たのに同社へ補償を求めなかったこと、④前田建設工業の化評研理事への不動産取引を装った利益供与疑惑等──が記されていた。
 SDカードには、二つの音声データがあり、一つは録音状態が悪く非常に内容が聞き取りづらい。だがもう一つは、「辞表を書くか書かないか」について二人の男性が話し合っているもので、うち一人は聞き覚えのある声だった。一体誰が何の目的でレポートを作成し、また録音したのか──。当事者に質し確認するほかない。
(後略)

 

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