森友学園への国有地安値売却、文書改竄と口裏合わせ、そして福田淳一次官のセクハラ辞任……。財務省がいま世間の批判を一身に集めている。しかし喉元過ぎれば熱さを忘れてしまうのも日本人の性。「墜ちた最強官庁」とマスコミからも袋叩きにあっているが、これもおそらくは一過性のもの。安倍内閣がこの先どう転ぼうとも、新年度の予算編成が始まるころには、当たり前のように財務省の権力は元通りに復活し、霞が関と永田町、さらには財界も再び予算編成権という魔力の前に拝跪することになるのではないか。
(中略)
「政研究会」。新聞、通信社、テレビの大手マスコミ各社が常駐する財務省の記者クラブの名称だ。通称「財研」という。大臣、次官室、官房のある財務省庁舎3階の真ん中にドンと部屋を構えている。ここが予算編成、税制改革、景気対策、為替……と、財務省発のニュースを一手に引き受けて処理している。
マスコミ業界ではこの財研記者の地位はきわめて高い。財研キャップといえば経済部デスク一歩手前のポストで社内での発言力もある。
何より扱っているニュースの価値が高い。予算、税制、為替いずれもツボにはまれば1面トップを飾る。当然のことながら各社ともにエース級の記者を配置、特ダネ競争を展開している。
国税情報も入る。かつて政界を揺るがせた金丸巨額脱税の摘発も国税資料が主役だった。検察も国税が長年蓄積してきた資料のお陰で事件の端緒をつかみ、あれだけの立件をなし得たのだ。
政界情報も早いし正確だ。政治家に対しては地元にいくら予算をつけてやるかという大きな武器がある。国会情報、派閥情報もいくらでも入ってくる。力のある政治家には必ずパイプ役となる役人がいる。政治記者がこうした情報通の役人に政局を聞くこともある。
価値ある情報を独占する役人と、それを手を変え品を変え取材する記者。この力関係の圧倒的な差がジャーナリズムを歪める。
大臣や事務次官の会見や、数あるレクチャーを見ていると、記者の迎合、当局側の居丈高な姿勢が伝わってくる。最近は一連のバッシングで役人サイドが腰を低くしている部分もあるが、記者側の勉強不足もあり、当局側をグイグイ追いつめる場面はない。
(中略)
財研記者であれば将来的には経済部長、論説委員、編集委員といった編集幹部になるのはまず間違いない。役人側からしてみれば財務省の考えを理解してもらおうとする時にこの関係が生きてくる。
特に増税といった世論の反対が強い政策を打ち出す時にてきめんだ。消費税導入の際には政府税調にかねて大蔵省(当時)に理解の深い大手新聞論委員を潜り込ませた。その後も大手マスコミ幹部の登用は続いており、現時点では産経、読売の幹部が税調の委員に名を連ねている。
消費税の税率引き上げについても、論説委員らを個別に撃破し、社説のトーンを増税やむなしに変えさせるなど、実に持ちつ持たれつの関係なのだ。こうして“根っこ”で繋がっているものだから、財務省から、権力とジャーナリズムの関係を越えた無理な要求が出てくることがある。
(後略)