記事(一部抜粋):2018年5月号掲載

政 治

安倍の「本当の敵」は麻生

財務大臣が居座る限り下がり続ける内閣支持率

 小説であれ映画であれ、質の良いミステリーに欠かせないのは、あっと驚く結末である。生きるか死ぬかの窮地に陥った主人公が、ふとしたキッカケで気づく裏切り者の存在……。思いもしなかった本当の敵は、自分のごくごく身の回りに潜んでいたというのが黄金パターンの一つだ。これを非現実的な作り話と捉えるか、危機管理の教訓と捉えるかで、人生の見方は大きく変わることがある。
 例えば支持率が急降下し黄信号が激しく点滅している安倍政権の場合、ここぞとばかりに追撃してくる野党が最大の敵である。しかし本当に怖ろしいのは、身内である自民党のなかで機会を狙う輩たち──そう指摘するのは、首相の出身派閥である清和会(細田派)の関係者だ。
「小泉元総理が、安倍さんの3選は厳しいとメディアの前でしゃべりだした。おそらくその動機の一つは、小泉さんがいくら原発ゼロを訴えても、安倍さんが一向に相手にしないことへの意趣返しでしょう。でも、もう一つ、小泉さんは自民党内の空気をよくわかっています。少なくとも来年7月に改選を迎える参議院議員たちは、選挙の顔が安倍総理のままでは戦えないと考え始めている。つまり、参議院の約半数が潜在的に安倍さんの敵方に回っているわけです」
 今年9月に予定されている自民党総裁選に出馬しようと意気込んでいる候補者は、今のところ石破茂・元幹事長(61)、岸田文雄・自民党政調会長(60)、野田聖子・総務大臣(57)の3名。
(中略)
 だが、いまだ正体を見せていない思わぬ伏兵が安倍総理の地元の隣県、島根から2人、登場するかもしれない。政治記者が続ける。
「一人は、4月に派閥を額賀さんから譲り受けたばかりの竹下亘・自民党総務会長(71)です。竹下登元総理の実弟ながらも控えめなタイプで、これまではノーマークでした。従来の観測では石破さんの応援団になると見られていましたが、今度の総裁選は竹下派の名前が復活して最初の記念すべき総裁選。派閥領袖が出馬しなくていいのかという意見が漏れてくるようになりました。彼の出馬は石破さんの勝算が薄くなることと同義ですから台風の目なのです。ネックは、主要な大臣ポストを経験していないこと」
 そしてもう一人の伏兵が、安倍総理の出身派閥である細田派の細田博之・元幹事長(74)なのだという。前出の細田派関係者がこう耳打ちする。
「清和会はこの20年の間に森、小泉、福田、安倍と4人の総理を生み出してきた最大派閥です。もちろん安倍さんを支える気持ちはありますが、このまま支持率が回復しないようなら最大派閥の責任として自民党の顔を変えなければならない。たしかに高齢ではありますが、知見と経験に照らして考えると、細田さんのワンポイントリリーフは十分ありえる。表立ってはいないものの、今回は安倍さんではなく、細田さんを御輿に担ごうという静かな機運が派閥内に生じはじめているのは確かです」
 久しく総理官邸に暮らし、派閥を長期間留守にした結果、足元が音も無く崩れ始めた──一寸先が闇という永田町らしいエピソードだ。しかし、すぐ身近に存在する最も危険な安倍総理の敵は細田氏ではないという。
(後略)

 

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