報道によれば、自民党憲法改正推進本部長の細田博之代議士が、自民党の改憲4項目(自衛隊、高等教育、参院選合区、緊急事態)について、法律の整備などで対応できるため改憲は不要だ……とする野党の主張を「立憲主義や民主主義に反する」と強く批判したとのことである。
まず、立憲主義とは、国民主権、人権尊重、平和主義、三権分立、地方分権、二院制、議院内閣制、司法の独立等、国家運営の基本構造(constitution)については、主権者国民の最高意思である「憲法」に予め明記し、政治家以下の公務員はその枠内で権力を行使して国家を運営せよ……という大原則である。だから、憲法に違反しない限り、時代状況の中で自由に法律・予算を制定改廃しながら、権力者たちは国家を運営し、最大多数の最大幸福を追求して行く役割を担っている。
この観点から、自民党の改憲4項目を分析してみると、次のようになる。
1、現行9条1項2項はそのままにして、「自衛隊」という文言を憲法に書き込むことで、自衛隊に対する「違憲」論争を払拭する……という。しかし、それでも、その「自衛隊」が、9条2項が禁じていると政府自民党が言い張ってきた立場を変更した2014年の海外派兵の解禁を担うことは違憲ではないか? という違憲論争と、その「自衛隊」が、政府見解が認める専守防衛のための「必要最小限度」を超えるのではないか? の違憲論争は終わりようがない。
2、高等教育の無償化(改め、充実の「努力義務」)を憲法に書き込む……という。しかし、「努力義務」とは、法律用語として、「できたらやりなさい。できなければかまわない」という意味で、そのような事を憲法に書き込むことは法的に無意味で、そのような事を850億円もの国費を使って国民投票にかけるという政治家たちは、一体、何者なのだろうか?
3、参議院選地方区を人口に比例して合区にしなくても済むように、「一人一票」の原則を相対化する規定を憲法に書き込む……という。冗談ではない。「議員は人の代表であり、林の代表ではない」ということは、自由・民主主義の諸国に共通する憲法常識である。
4、大災害等の緊急事態に、首相に、既に掌握している行政権に加え、国会から立法権と財政権を移し、(だから法律を執行する司法権も隷下に置き、)地方自治体に対する命令権も与え、私たち国民は公の命令に従う義務を負う……ことになるという。加えて、選挙ができない場合の国会議員の任期を自動延長する……という。しかし、未だに東日本大震災の被災者は悲惨な生活を強いられているという報告は絶えない。そこで、上記のような憲法体制になったらその被災者たちは速やかに救済されるのであろうか? 誰も信じないであろう。なぜなら、今でも既に事実上の全権を掌握している安倍一強政権は、要人の被災地訪問を繰り返すだけで、救済は肝心な点で前進していない。
このような、自民党の改憲案に対する批判のどこが「立憲主義や民主主義に反する」のか? 自民党に説明してほしい。
子供の頃の記憶が蘇って来た。喧嘩して、「馬鹿!」と罵られた子供が、相手に対して二倍の大声で、「お前こそ馬鹿だ!!」と怒鳴り返していた。今の自民党はこの程度に見える。
昔の自民党は、もっと知的で余裕があった。情け無い。