社会・文化
成田市で浮上した「補助金詐取疑惑」
市議会議長の会社に400万円、申請書類に偽造の疑い
千葉県成田市といえば、国際医療福祉大学の誘致をめぐり、用地取得や建設費など128億円もの税金を支出したことが話題になった自治体だ。このご時世に何とも気前のいい話だが、成田国際空港を抱える同市は、固定資産税などで160億円の税収があり、人口13万人ながら潤沢な自治体の部類に入る。その成田市で、今度は市議会議長らによる補助金詐取の疑惑が持ち上がっている。
発端は一市民の「告発」だった。
告発したのは、長年市政を監視してきた山田浩一氏(仮名)。昨年12月19日、成田市コンプライアンス審査会に公益通報し、翌20日に「成田市職員措置請求」を起こした。補助金の交付決定手続きが適正であったかどうかなどについての監査請求である。
「そもそもは市職員からの通報がきっかけでした。市議会議長の伊藤竹夫氏と元市議会議長で現市議の上田信博氏に関して重大な疑惑があるという情報が持ち込まれたのです」(山田氏)
その“通報”によれば、疑惑の舞台は成田市の地域密着型サービス等整備事業補助金の対象である「定期巡回・随時対応型訪問介護事業所整備事業」。これに、伊藤議長が2014年12月に設立し自ら代表を務める「ケアギバー」が事業者申請し、同社は15年10月首尾よくに事業者に選定された。申請書類によると、ケアバギーの「本店事務所」は伊藤議長の自宅で、「事業所」も自宅住所になっていた。
しかし一旦は認定を受けたものの、その後、家族の反対にあって、やむなく別の場所に事務所を移した。移した先は上田市議の所有物件。しかしこの時は、サービス事業者を選定する委員会の審査は当初の伊藤議長の自宅の審査のままで、事業所となる上田市議所有の物件が審査を受けることはなかった。にもかかわらず16年11月30日に申請した補助金交付が翌月15日に決定し、388万3000円と追加分の合計407万5000円が昨年4月26日に支払われた。
山田氏は情報公開制度を利用して、一連の補助金申請資料を入手。すると、上田市議所有の物件をめぐってケアギバーと「エース東日本」(本社は東京・日本橋)が交わした「事業用建物賃貸借契約書」に不審な点が見つかったという。エース東日本は上田市議が代表を務める会社で、「路面・床面のすべり止め施工やガラス・石材の表面処理施工」などを目的に1986年に設立されている。
賃貸借契約書には「媒介業者」として「GALLOP R・E・A」(以下ギャロップ社)という東京都内の不動産会社の名が記されているが、実はこのギャロップ社、14年9月に宅地建物取引業免許を失効していたのだ(失効理由は、東京都によれば、廃業ではなく消除)。賃貸借契約書の作成日は16年10月25日で、そこには失効した東京都の宅建免許番号が書き込まれていた。
ケアギバーが成田市に補助金を申請したのは16年11月で、この時点でギャロップ社は宅建免許を失効している。つまり、添付書類とはいえ、これは補助金申請書の偽造、補助金詐取ではないかというのである。ちなみにギャロップ社の代表はケアギバーの役員でもあった。
山田氏が憤慨して言う。
「少なくとも、私文書偽造、同行使の罪に問われてしかるべきものです。市の福祉部介護保険課長は、私の監査請求に基づいて今年1月17日に行われた陳述で、『新貸借契約書は有効』と述べましたが、伊藤、上田両氏の補助金詐取に加担したととられても仕方がない」
しかし、その介護保険課長は年初に山田氏と面談した際には、こう話していたという。
「伊藤議長が『自宅を事業所にすると、従業員と同じトイレを使うことになると女房に反対された』と言うので、補助金等の申請は止まっていた。その後、上司の福祉部長から、『伊藤議長の補助金交付の件、どこの物件でもいいから通してやれ』と命令された。しかし、審査会を通していない物件は補助金交付の対象事業所にならない。『審査会を通してほしい』と言うと、部長は『なんでもいいから通してやれ』と。それで、審査を受けていない物件(上田市議の所有物件)をあたかも審査が通ったように装い、補助金を支出した」
補助金申請の偽造書類は他にもあった。内装工事に係る見積書だ。見積書は二つの業者から出ているのだが、50万円ほど高い金額を出した業者(A社)の見積書が偽物だった。
(後略)