記事(一部抜粋):2018年2月号掲載

社会・文化

レオパレスを追いつめる“正義の味方”

集団訴訟を呼びかける「やり手オーナー」

「悪魔でも聖書を引くことができる。身勝手な目的のためにな」
 シェイクスピア作『ヴェニスの商人』に登場する有名な台詞だが、実際、正義の味方として登場する人物の本心はしばしば真っ白ではない。例えば、企業の危機に現れた巨額融資の仲介者が「M資金」詐欺師だったり、多重債務者に手を差し伸べる篤志家が「貧困ビジネス」の窓口だったりすることは珍しくない。
 このところ、本誌で何度か取り上げてきたサブリース業界に当てはめてみよう。
 この業界では、ナンバーワンの大東建託が、ややぼったくりに近い建設費でアパートを建てさせ、実態とは違う良いこと尽くめのセールストークで地主を篭絡し、未曾有の好決算をはじき出してきた。しかし一方で、地主とのトラブルも頻発しているため、サブリース業界全体が、地主から搾取しているかのようなグレーなイメージを持たれるに至ってしまった。そんな業界の大手に対し、「正義の味方」が立ち上がって訴訟を始めたと聞けば、新聞を含めメディアが先を争うように報道することも理解できなくはない。さて、その実態はどうだったのか。
 実は、業界2番手の「レオパレス21」を相手取って、訴訟を乱発するオーナーたちの会の代表に、正義の味方らしからぬ話が持ち上がっているのだという。
経済部記者が解説する。
「事の始めは一昨年11月のこと。レオパレス21に対して多数のオーナーが、未払い賃料4億8000万円を払えという集団訴訟を提起しました。問題になったのは、レオパレス側が、入居者用の家具や家電を備え付ける代わりとして徴収していたレンタル費用。オーナーに払う賃料から一部屋ごとに2000円を徴収し、7年から14年を目安に古くなった家具や家電を新品にする契約だったそうですが、それをレオパレスが怠ったという言い分でした。この訴訟に参加したオーナーは全国28都道府県、129人にも上ったのです」
 この訴訟に触発されたかように、2017年は、レオパレス21に対する訴訟ラッシュの年になった。2月には、新築から10年間は不変のはずの家賃を下げられたという訴訟が名古屋地裁に提起され、9月にも同じ名古屋地裁に、29人のオーナーが提訴。こちらは、屋根の塗り替えや部屋のクロスの交換をするためにレオパレス側に払っている修繕費用を返還せよという訴訟。さらに、同様の訴訟が7件も相次ぎ、現段階では、総計10件の訴訟に参加するオーナーは延べ270人以上だという。
 経済部記者が続ける。
「一連の経過だけを見ると、家賃は下げるし、修繕はしないしと、とんでもない悪玉企業に、立場の弱いオーナーたちが力を合わせて立ち上がった話のように映ります。しかし、事はそう簡単ではないのです。当然、レオパレス側にも言い分がある。例えば、修繕費用を返還せよという訴訟ですが、外壁を7年で塗り替えるというのは一つの目安で、痛み具合を見ながら管理していくのがメンテナンスの基本。中には、目安よりも早くクロスが痛んでしまい、張り替えたケースもあるそうです。そもそも、修繕は経年劣化とともに必ず必要な経費ですから、いきなりオーナー側に大きな負担が掛かって生活設計に支障をきたすことがないようにという趣旨で、積み立てているわけです。入居者がいてもいなくてもオーナーに家賃を支払う立場にある会社側が、アパートの見栄えが悪いまま放置していると考えるのも理屈には合いません。ですから、『目安表の通りに修繕がおこなわれていないから全額を返還しろというのはおかしい』という会社側の主張にも一理あるのです」
 もう一つの問題は、連続して訴訟が起きる背景に見え隠れする団体だという。
「レオパレスには2万人以上のオーナーがいて、3万5000棟のアパートを経営しています。これらの訴訟が地域的にも人脈的に偏っていることに目を向けねばなりません。実は、一部のオーナーたちが作っているLPオーナー会という団体があり、ここが訴訟を強力に推進しているのです」(同)
 LPオーナー会は、現在も代表を務める前田和彦氏が、14年1月に名古屋で設立した団体である。ホームページには、「訴訟に参加されたい方は、LPオーナー会本部までご連絡ください」という記述もある。
(後略)

 

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