今年(2018年)の世界情勢は、トランプと習近平が大接近した米中の二大覇権国家と、核・ミサイルでその米中にケンカを売る極東の小国北朝鮮の二つの軸を中心に展開されてゆくだろう。
“米中新時代”という世界潮流のなか、唯一、米中が対立関係にあるのが朝鮮半島で、米中とも、それぞれの思惑のちがいから、北朝鮮の核・ミサイル開発にブレーキをかけることができなかった。
中国が金正恩体制を温存させてきたのは、北朝鮮が緩衝国として、中国の国益に合致していたからで、これまで、食料や物資の支援をおこない、国連安保理で北朝鮮の肩をもってきた。だが、核保有国となった金正恩北朝鮮は、いまや、中国の同盟国でも友好国ですらなくなりつつある。
北朝鮮の核ミサイル問題の焦点が、今年はじめに完成するといわれる核弾頭と大陸間弾道ミサイル(ICBM)にあるのはいうまでもない。もっとも、北朝鮮の核は防衛用(相互確証破壊)であって、先制攻撃に使用されることは100%ありえない。したがって、アメリカには対朝戦争に踏み切る理由もメリットもない。
この現状の固定化こそが米中の望むところで、北朝鮮が防衛的にしか使用できない核戦力を誇示したところで、米中には痛くも痒くもない。そのかんに中国は一帯一路戦略をおしすすめ、アメリカは武器・軍需物資を世界中に売りまくるだろう。
(中略)
2018年以降、世界は、米中の大接近によって、二極支配の構造を呈するだろう。
もともと、米中は似た者同士の国家で、いくつか共通点がある。
①ともに革命からうまれたイデオロギー国家である
②国家の上位に共産党組織や軍産複合体という軍事機構をもつ
③グローバリズムに立った覇権国家で、両国で二大強国を形成している
イデオロギー的に相容れない米中両国が手をむすぶのは一種の〝棲み分け〟で、それを端的にあらわしたのが習近平の「太平洋には中国と米国を受け入れる十分な空間がある」という発言(トランプとの共同記者発表)だった。
中国が革命国家であることはだれもが知っている。ところが、アメリカが革命国家であるという認識は、案外、乏しい。
アメリカの独立戦争は、世界で最初の市民革命でもあって、独立宣言・合衆国憲法をとおして、自由・平等そして民主主義を謳いあげる市民社会を出現させた。
アメリカと中国は、ともに革命国家で、そこに米中が一脈つうじあう理由があるのだろう。
1996年の台湾海峡ミサイル危機は、台湾総統選挙での李登輝優勢に焦燥を深めた中国軍が台湾海峡にミサイルを撃ち込んで恫喝したもので、これにたいして米海軍は、台湾海峡に太平洋艦隊を送り込んで牽制した。このとき、米中のあいだで、投票日の3日前にミサイル発射停止、その直後に米艦隊を海峡から撤退というシナリオができていたとされる。
ニクソン大統領の訪中準備のため1971年におこなわれたキッシンジャー特別補佐官(当時)と中国の周恩来首相(同)の極秘会談では「日本の軍事大国化を防ぐには日米同盟でコントロールすべき」という〝瓶のふた論〟を展開している。
人工国家である米中両国は、国家の上部構造にイデオロギーにもとづく軍事機構をそなえている。
米中が超大国となったのは国家概念に〝海外侵略〟がとりこまれているからで、中国の共産党もアメリカの軍産複合体も、世界にむかって拡張してゆく装置といってよい。
強権国家として、対外的に拡張してゆくための国家戦略を練るのが中国共産党で、第19回中国共産党大会では、習近平思想の党規約への明記が決議されて習近平の独裁者としての地位も確定した。
アメリカを追いこして、世界一の大国をめざす習近平の思想が、毛沢東思想や鄧小平理論と並んだわけで、習近平の「一帯一路」戦略が国家戦略となったのである。
一方、アメリカの国家戦略は、軍事力による世界制覇で、それが軍産複合体(MIC)という国家臨戦態勢である。トランプが軍事関連製品のセールス外交をくり広げたのは、軍産複合体のアメリカにとって、軍需物資の輸出が経済の生命線だからで、アメリカは戦争から国益をえる国家なのである。
ホワイトハウス(大統領行政府)とCIA(中央情報局)、ペンタゴン(国防総省)の下に3万5000社にものぼる傘下企業群、金融機関、大学や研究室、政府機関やマスコミ、350万人以上の将兵を抱える軍部、議会までがつらなるのが軍産複合体制という国家臨戦態勢である。
これは中国も同じで、中国という国家の上部概念に中国共産党と中国共産党が組織する人民解放軍が存在する。
アメリカと中国は、国家の上に、軍産複合体(MIC)や中国共産党(人民解放軍)という軍事ハードウエアを背負った特殊な国家なのである。
米中とも世界戦略(グローバリズム)を必要とするのは、国家を統一、発展させるには、対外侵略に依存せざるをえないからで、それが、中国でいえば、一帯一路である。
(後略)