記事(一部抜粋):2017年12月号掲載

政 治

「野党共闘」ができない愚かな面々

【コバセツの視点】小林節

 11月のJNN世論調査の結果では、5カ月ぶりに安倍内閣の支持率が不支持率を上回ったそうである。
 とはいえ、先の総選挙で与党が三分の二以上の議席を占めたことは「多すぎる」が60%で、「ちょうど良い」の31%の倍である。また、安倍首相が自民党総裁を三期勤めることについては「反対」が54%で、「賛成」の36%を大きく凌駕している。さらに、加計学園の獣医学部新設認可の答申に「納得している」者は25%しかいないのに、「納得していない」者は62%もいる。
 このように、まるで「報道規制」でも敷いたように大人しいマスコミ論調の下でも、安倍内閣(首相)の信用は必ずしも回復してはいない。
 しかし、小選挙区を中心とした選挙制度と自公の鉄の選挙協力のお陰で、自民党はまたも4割台の得票で7割台の議席を確保した。加えて、四分五裂した野党の不甲斐無さが、有権者の政治離れ(棄権)を招き、相対的に自公の組織票の効果が拡大されたことも見逃してはならないだろう。
 毎回、国政選挙の前に、私を含む多数の論者が、「相対的多数派が全議席を得る小選挙区制である以上、野党も、自公に学んで統一候補を立てるべきだ」と主張する。しかし、野党、特に最大野党の民進党とその最大支援組織の連合が四の五の言って、拒否し、野党は毎回敗北を喫してきた。
 まず、野党選挙協力が出かかると、必ず、与党から「野合」批判が聞こえてくる。しかし、「天皇を戴く神の国」だと考える自民党と「国立戒壇の建立」を目指す日蓮仏法の信徒集団の公明党が権力維持のために一体化しておきながら、野党連合を指して「野合」などと呼ぶ資格はない。現に、公明党の代表は「自民党とは憲法観が違う」とまで公言しているではないか。
 ところが、野党は「政策特に国家観(つまり憲法観)が違う他党とは協力できない」などと平気で言ってしまう。それでいて、議員は、共産党は別にして、どの党派に限らず、臆面もなく、「筋を通しても落選して政治家でなくなったら政策実現の力がなくなってしまう」などと言いながら、平気で主張を変えてしまう。
 沢山の野党政治家たちとも直接話してきた私は、結論として、民進党系の政治家のほとんどは、「共産党の票は欲しいが、共産党とは協力したくない」「共産党の選挙支援は欲しいが、選挙で自公に勝っても共産党は政権に入れたくない」という思いを持っている。実に図々しい話である。
 あれだけ「『戦争法』は違憲だ」と正論を主張していた民進党の議員たちが、一夜にして、「戦争法を受け容れ、合憲的に運用する」などと言えてしまう様を目撃して彼らを軽蔑した国民は多いはずだ。
 それに比べれば、「自衛隊・日米安保は違憲だが、国際情勢と世論が許すまではそれらを活用する」と主張する共産党の方がよほど誠実で信用できる。
 安倍首相を取り替える(人心一新)も、立憲政治の回復も、法治主義の回復(反人治主義)も、憲法改「悪」阻止も、いずれも野党統一の根拠になる高次元の大義名分である。その下の政策課題について内部で異論を摺り合わせて調整することは、政治そのものであり、何も恥ずべきことではない。
 共産党抜きの野党共闘などはあり得ないことは明白である。

 

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