(前略)
C コンプライアンス体制が杜撰だね。神戸製鋼の副社長のコメントだと、9月21日に主力得意先のトヨタとJR数社に報告したと言っている。正式発表したのは10月8日。ところが「経営陣が組織的な不正に気づいたのは8月30日だった」と言ってしまった。問題は、知ってから発表までの「空白の20日間」だ。
B 空白の20日間か? その間、何をやっていたかだよね。
A 予想されるのは、まず、関係が深い政治家に報告する。そして神戸製鋼は通産省の元事務次官を社外取締役として受け入れているから、経産省と対策を協議する。そして次は融資を受けている金融機関に報告する。トヨタやJRはその後だ。
B 関係する政治家といったら、神戸製鋼には政治家秘書になるまで3年7カ月お世話になったことがある安倍首相しかいないじゃない?
A 安倍首相がお世話になった山口県下関市にある長府製造所は今回のデータ改竄の拠点の一つで、首相になってからも何度も訪れているから、報告しているのはまず間違いないと思う。実はこの件が絡むかどうかはわからないんだけど、不可解なことが起こったんだ。
B 不可解って、経済面で?
A 北朝鮮が絡む天然ガスパイプラインの話。北朝鮮の核疑惑についてはしつこいくらいにどうでもいい情報を垂れ流す大手メディアがダンマリを決め込んだ。日本だけでなく、米欧のメディアもね。
C たしかに、北朝鮮の核開発問題の解決策として、ロシアのプーチン大統領がシベリアから日本を通り、さらに朝鮮半島を縦断し中国から欧州へとつながる鉄道を建設、その線路にシベリアやサハリン産の天然ガスを送るパイプラインを敷設するという壮大なプロジェクトを提案したらしいけど、メディアで取り上げたところはないね。
B シベリアから日本につながる鉄道を建設し、それに天然ガスのパイプラインを敷設するというプロジェクトは、この座談会では何度か取り上げたけど、プーチン案はそれを朝鮮半島へも縦断させ、さらに一帯一路へとつながる鉄道とパイプラインを敷設するというものだ。
A 9月6日からウラジオストクで開催された「東方経済フォーラム」でプーチンが提案したわけだけど、このプロジェクトが実現すれば、北朝鮮は縦断する鉄道とパイプラインの通行料を徴収できる。
B その提案に北朝鮮は何と答えたの?
A スクープ記事が多いことで知られる『アジア・タイムズ』のペペ・エスコバル記者によると、「反対しない」と答えたらしい。たぶん、後は条件次第だと思う。
C 金正日総書記が生前、ロシアを訪問してメドヴェージェフ大統領と会談した時に、ロシア側から「朝鮮半島パイプライン構想」が提案され、金正日は「検討する」と回答したといわれている。その際に北朝鮮が受け取る通行料は年間1億ドル。しかし、金正恩がその上乗せを求めてくることは間違いない。
B その案に対する他の国の反応はどうだったの?
A 反対したのはアメリカだけ。中国、韓国も安価なロシア産の天然ガスの供給は自国にとってプラスだし、それで北朝鮮の核開発の動きが止まるなら万々歳だから賛成した。これは理解できるとしても、出席していた安倍首相と河野外相が、アメリカが反対したプーチン案に「協力する」と賛成したのには驚いた。戦後ずっと対米従属でやってきた日本では考えられないことだ。
B それで、これと神戸製鋼がどう絡むの?
A 実はプーチン案に各国が賛成したという話を聞いて、このプロジェクトで一番恩恵を受ける日本企業はどこなのかを自分なりに調べてみたんだ。
B それが神戸製鋼なの?
A 神戸製鋼は天然ガスの発電所では先行していて、現在、神戸で2機稼動している。そして来年1機稼動し、2022年にはさらに2機稼動することになっている。すると発電量でみると四国電力に匹敵する電力会社になる。しかも、ロシア産の安価な天然ガスがパイプラインで安定的に供給されるとなると、原発に頼らない日本を代表する電力会社になる可能性がある。
(後略)