記事(一部抜粋):2017年10月号掲載

社会・文化

郷鉄工所「倒産」の裏で暗躍“焼け太り”した業者の素性

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 粉砕器などの産業機械メーカー「郷鉄工所」(岐阜県垂井町。林直樹社長)が9月11日、東証、名証各2部への上場が廃止になるとともに、自己破産を岐阜地裁に申請した。同日、残っていた従業員79名を全員解雇して事業を停止し、1931年(昭和6年)創業の歴史に幕を閉じた。負債総額は約40億円と見られる。
 昨今、上場廃止になる企業はそう珍しくはない。そうした企業は大半が、赤字をタレ流しながらも度重なる増資で生き残っていた仕手銘柄のいわゆる「ハコ企業」で、その歴史は短い。だが、郷鉄工所は手堅い実業を持ち、長年営業を続け、97年3月期には約92億円の売り上げがあった。それが上場廃止、倒産というのだから何ともショッキングだ。
 同社は2016年3月期に債務超過に陥り、17年3月期の有価証券報告書を期限までに提出できず上場廃止になったが、その裏側で何があったのか。それは、今後の捜査の過程で明らかになるだろう。
 そう、郷鉄工所に関しては、すでに当局が動いていると見られるのだ。運転資金にも窮するようになった昨年初めごろから、同社は事件屋の松尾隆氏に資金繰りを頼むようになり、以降、松尾氏の関係する反社会的勢力に属する面々も登場。その過程で手形が乱発され、違法な利子を取ったり、反社への利益供与、手形のサルベージ名目などで詐欺紛いの行為もあった模様だ。
 それはともかく、現時点ですでにハッキリしていることがある。それは、やはり松尾氏の紹介で郷鉄工所に資金を貸し付けていた不動産関連会社「ミロクリース」(京都市下京区)の朝倉応水社長が“焼け太り”したと見られることだ。
 郷鉄工所は倒産前に2度の不渡りを出しており、ババを掴まされた融資先や取引先は少なくない。しかしミロクリースは、倒産前に融資資金をしっかり回収していた。それどころか、郷鉄工所の資金難に乗じて、今年3月10日には岐阜県垂井町にある同社の本社工場の土地を破格の安値で買い取っているからだ。
 購入したのは浅倉氏がやはり代表を務める「充雲」(大阪市東淀川区)なる不動産会社で、評価額が29億1000万円のところを、17億5000万円と11億6000万円も低価格で購入した。
 地元の事情通が解説する。
「これほど安く買い叩けたのは、郷鉄工所が存続し事業をおこなっている以上、土地を処分できないと見られていたからです。実際、事業停止になるまで浅倉氏は郷鉄工所の大家として、家賃を受け取っていました。しかし、事業停止となれば堂々と工場を解体して土地を転売できる。意地の悪い関係者の間では、『松尾氏、浅倉氏に通じる融資先がバックマージンを約束され、わざと手形を差し入れたのでは?』といった声も出ています」
 実際、郷鉄工所の工場が更地となれば、購入希望者は多数いると見られている。
「垂井町の庁舎が今年11月、工場の横に引っ越してきます。すると幅6メートルの取り付け道路(新設される建物と既存の道路を結ぶ道路)ができる。これだけで工場跡地の評価は40億円にハネ上がります。さらに最寄りの高速道路(東海環状自動車道)の養老インターチェンジ(IC)が今秋開通する。三重県の四日市港から養老ICまで約40分。同ICから工場跡地まで5分。名古屋港から1時間で来れます。このためヤマト運輸、日本通運などがあのエリアで一大物流拠点を作りたがっているという話があるんです。郷鉄工所の跡地は国道に面しているからコンテナ車もスムーズに入れる。しかも、それに見合う1万坪以上のまとまった土地(郷鉄工の工場の敷地は約2万2000坪)は付近には見当たりませんから、一説には50億円以上に化けるとの見方もあるのです」(同)
 17億5000万円で購入した土地が、1年ほどでその約3倍で売れるとしたら、関係者のほとんどが上場廃止と事業停止で落胆するなか、まさに浅倉氏は焼け太りである。いったい朝倉氏とはどんな人物なのか。
 筆者自身、郷鉄工所の倒産に至る一連の経緯を取材、執筆するなかで、企業事件に詳しい右翼関係者から「記事に手加減を加えてもらえないか」との依頼があり(当然、拒否した)、その実際の依頼者が浅倉氏だったと後に判明したことからなおさら気になるところである。そこで改めて取材をしてみると、何と有料老人ホームなども経営する人物であることがわかってきた。
(後略)

 

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