記事(一部抜粋):2017年9月号掲載

経 済

サブリース「終わりの始まり」

アパートローンの不良債権化が地銀を直撃

 本誌が昨年から二度にわたって報じてきた「サブリース問題」の波紋が、目下、ジワジワと広がりを見せている。このところ経済誌のネットメディアを中心としてサブリース大手の内情に関する記事がポツポツと掲載されるようになってきたからだ。新聞でもサブリース契約の問題点が報じられるようになり、わが世の春の好景気を享受している業界をよそに、火種はブスブスと燻り始めたかに見えるのである。今号では最大手「大東建託」のIRをベースとしながら、内情と新たに浮かび上がった問題を解説していこう。
 そもそもの問題意識の出発点は、なぜ人口減少の著しい我が国の地方都市にアパートの建設ラッシュが起き、サブリース会社が未曾有の利益を上げ続けることができるのかという表裏一体の根本的な疑問だ。
 新築アパートを建設する地主はしばしば相続税対策を第一の目的としている。アパートは相続発生時の土地建物の評価額を低く抑えられるだけでなく、アパートローンで建設した場合、残っている借金が相続財産を圧縮する効果も見込めるからだ。超低金利の昨今ならば、多少の空室があったとしてもアパート経営が黒字になる公算が高く、まして大東建託のようなサブリース業者が家賃保証したうえ、30年一括で借り上げてくれれば、厄介な空室リスクもない……。と、ここまでの話が実現できるなら、地主も大東建託も「ウィン・ウィン」の関係になる。大家は、何一つ苦労もせずに銀行ローンを支払い、その残りの金額を副収入として懐に入れることができる。
 しかし、新築時はともかく、地方都市郊外の畑の真ん中に建ったアパートが、大家とサブリース業者の双方に富をもたらすケースは稀だ。やがて、大家は大東建託から家賃の減額交渉をされて青ざめ、場合によっては、財布から持ち出した金で銀行ローンを補填して払わねばならない事態を迎える。それゆえ儲かるのはサブリース業者ばかりという話になるのである。
 実際、大東建託は凄まじい利益を出している。
 (中略)
 有価証券報告書の従業員の状況欄によれば、約1万人の従業員の平均年齢は42歳で、平均年収は892万円に達している。国税庁の民間給与実態統計調査を見ると、日本のサラリーマンの平均給与は420万円(平成27年調査、男性521万円・女性276万円)だから、倍以上の高所得という計算だ。ただし平均勤続年は8年に満たない。
 約1万人の社員のうち、7000人が建設事業に携わる従業員で、半数が技術者、半数が歩合制で給与を受け取る営業マンである。この3500人もの営業マンが、従業員の平均年収を大きく押し上げていることは想像に難くない。
 大東建託の営業の内情に詳しい記者が解説する。
「一昔前のモーレツ営業マンのスタイルなので年功序列は関係なく、成績次第でかなり稼げます。例えば、地方の地主さんに飛び込み営業をかけて、新規にアパートを一棟建てる契約を交わし、完工までこぎつければ月収は200万円を越える。大東建託は、営業キャンペーン期間も設定していて、その間に契約が成立するとハワイ旅行などの報償もつく。しかし、契約を取ってこれなければ歩合給はもらえず、賞与もなし。半年間、実績を上げられないと給与カットがある。そのため営業マンの離職率は高く、20名程度の営業マンが在籍する支店で生き残れるのは4〜5名くらいと言われています」
 年収2000万円をこえるやり手が別に珍しくない一方、1年もたずに辞めていく中途採用の営業マンは後を絶たない、そんな職場環境ということになる。
 ちなみに役員の報酬も頭抜けており、連結の報酬が1億円を超えている役員が4名。9期連続で最高益更新を続けているため、経営方針は対前年比を上回る目標を掲げ、強気一辺倒だが、実は、営業的に困難な局面を迎えつつあるという。
 事情通の記者が続ける。
「アパート新築の新規工事の受注高や件数はすでにピークアウトし、対前年比100を割っています。受注件数のマイナスをカバーするためには、1件あたりの受注単価を上げるほかなく、受注単価は2年前に8800万円だったのが9600万円まで急騰中。つまり、より単価の高いアパートの建設工事で儲けようとするわけですが、このやり方を続けていくと、銀行から借金しすぎた地主がローンを払えなくなり、破綻するケースが多くなる可能性がある。社会問題に発展しかねません。地主とウィン・ウィンの関係だというセールストークも色褪せて、成約率が下がっていくことが予想されます」
 どうやら、わが世の春はまもなく終わりを告げそうだが、サブリース業界全体が右肩上がりで建設し続けてきたアパート群は、業界の先行きとは全く別次元の問題を抱えているという。
(後略)

 

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