記事(一部抜粋):2017年8月号掲載

経 済

GPIF 泡沫のユーフォリア

直近の運用は絶好調だが……

 内閣府の有識者検討会(座長・清家篤・前慶應義塾長)が、公的年金を受け取り始める年齢を70歳よりも後にできる仕組みづくりを、年内にまとめる「高齢社会対策大綱」に盛り込む検討に入った。
 7月18日の検討会で座長の清家氏は「もっと先まで繰り下げ支給の幅を広げる可能性がある」と指摘。繰り下げできる年齢について、委員の中からは「75歳とか、もっと伸ばしてもいい」との意見が出たという。
(中略)
「現役労働者の平均賃金の50%」という年金水準を確保するには、掛け金を引き上げるか、給付額を引き下げるか、もしくは支給開始年齢を引き上げるしかない。有識者検討会や自民党PTの提言は、「働ける元気な高齢者を支援する」を名目に支給開始年齢の引き上げに踏み込もうとするものにほかならない。しかし、政治的には難題で、実現するかどうかは未知数だ。少なくとも反発は避けられない。
 結局、現状で自・公政権が選んだのは「運用で何とか賄う」という、一見すると安易で、最もリスキーな道だった。
 その役割を一手に引き受けているのが世界最大規模の年金基金として約145兆円もの資産を抱える「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)だ。
 そのGPIFの運用がこのところ絶好調だ。7月7日に公表された2016年度の運用実績は7兆9363億円のプラスで2年ぶりに黒字を確保した。運用利回りは年5.86%と、マイナス金利下の厳しい環境下にありながら高い利回りを上げた。
 主因は、トランポノミクス(米トランプ大統領の経済政策=大幅な減税、規制緩和、大型の財政出動、インフラ投資)への期待から米国株式が史上最高値を更新するなど世界的に株価が上昇したことによるものだ。
 GPIFの運用益の内訳をみると、国内株が4兆5546億円(14.89%)、外国株が4兆3273億円(14.20%)のプラス。一方、国内債はマイナス3958億円(マイナス0.85%)、外国債はマイナス5962億円(マイナス3.22%)に沈んだ。
 GPIFは14年10月に資産の構成比率を見直し、基本ポートフォリオの資産構成を国内株式25%、外国株式25%、国内債券35%、外国債券15%の比率に変更した。国内債券の運用比率を大幅に引き下げる一方、国内外株式の運用比率を大胆に引き上げた結果、全体資産の半分が株式運用で占められるリスク度の高いポートフォリオとなった。
 一般的に株式は債券に比べて価格変動が激しい資産だ。その運用割合が50%を占めるということは、もはやGPIFは「年金ファンド」というより「投資ファンド」に近い性格に変容しているということだ。
(後略)

 

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