記事(一部抜粋):2017年6月号掲載

経 済

極まれり「財界」の人材不足

【情報源】

 日本郵政が2017年3月期連結決算で、15年に買収した豪物流大手のトール・ホールディングス絡みの多額の損失によって民営化以降、初の最終赤字に転落した。15年11月号本欄で指摘したように、買収額6200億円という高値掴みで3000億円ののれん代を抱え込み、国際物流事業のノウハウを持たない官僚体質の日本郵政にその舵取りができるはずもなく、案の定、経営陣の判断の甘さと上場前のお化粧に過ぎなかったことを裏付けた。
 5月初めには保有不動産の再開発による収益向上を狙って野村不動産ホールディングス買収の検討に入ったが、これとてどれほどのシナジーがあるのか。巨額減損直後の数千億円規模の投資はあまりにリスキーであり、日本郵政の焦りすら感じる。
 その日本郵政傘下のゆうちょ銀行が大きな岐路に立たされている。同行は地方銀行との提携を進め、4月には個人向けの無担保融資業務への参入を申請している。ただ、政府が株を保有するゆうちょ銀行が今後も地域金融機関と同じ土俵で戦えば不公正なルールの下で共倒れの懸念が募り、かといって地銀と郵便局のネットワークの連携に活路を求めれば、自らの店舗網の大幅な縮小を迫られる。独自のビジネスモデルを構築するならば、「たとえば資産運用に特化する農林中金型」(メガバンク幹部)という選択肢もあるが、店舗・人員の大リストラによる混乱は避けられない。全国に233の直営店を持ち、一方で有数の機関投資家でもあるゆうちょ銀はどのようなビジネスモデルを選択するのか。これまで足利銀行の再建や東日本大震災事業者再生機構のトップとして実績を上げ、昨年4月に鳴り物入りで同行の社長に就任した池田憲人氏だが、早くもその経営手腕が問われようとしている。
 ところで、今回改めてクローズアップされたのが、日本郵政前社長の西室泰三氏。西室氏といえば「東芝の天皇」と呼ばれ、不正会計に手を染めた東芝の歴代社長に強い影響力を持ち、東芝危機の発端となった米ウェスチングハウス買収で暗躍したのも「相談役として院政を敷いていた西室氏だった」(東芝関係者)という。その後、転身した日本郵政でも西室氏が強引に主導した豪トール社が巨額損失を強いられたのだから、西室氏の罪は重い。
 それにしても福島原発事故の東京電力や東芝、日本郵政の迷走が象徴するように、わが国の財界の人材の枯渇ぶりは深刻だ。国家的な問題や大手企業の再建、大がかりな業界再編を請け負い、主導してきたかつての土光敏夫氏、石坂泰三氏のような大物は残念ながら見当たらない。背景には、バブル崩壊後の“失われた20年”で多くの企業がコスト削減など内向きの経営を強いられ、リーマン・ショック後は先進国の衰退と急速な新興国の台頭に直面、生き残り戦略に汲々としてきた結果、スケールの大きいグローバルな人材が育たなかったことがある。
 最近の経団連会長をみても現在の東レ出身の榊原定征氏を筆頭にいかにも小粒で、かつての「財界総理」の面影はない。
(後略)

 

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